「明日の食卓」小説を読んで私の感想!読書感想文

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映画も公開されることになりました椰月美智子(やづきみちこ)原作の「明日の食卓」ですが、今回は、小説を読んでの私の読書感想文の紹介です。

「明日の食卓」読書感想文

「明日の食卓」を読んで

台所は女の城と昔は言ったものですが今は夫婦、家族全員平等に台所に立たなければいけない場所と世の中の定義は変わりつつあります。それでも、それぞれの家庭の味というものがありそれがうまくできているのかどうか?は気が付いていないこともあるのです。

この物語は過保護気味で子どもの異常気質に気が付かない「あすみ」子育てと自己実現のはざまで家族関係がくずれる「留美子」シングルマザー清貧に生き次第に限界にぶつかる「加奈」の3つの家庭の問題を見ながら児童虐待による子殺しの犯人はダレ?というミステリーを読者に想像させる、あるかもしれない話です。

読み進めていくうちに、犯行に至るのは「サイコパスな優の母あすみ?」「家庭内暴力が横行する留美子?」もしかしたら「貧困による無理心中で加奈?」などなどの予想に反して、犯人は全くよその同姓同名のイシバシユウ君でした。

子どもを持つ母親なら、3人の母親と子どもたちのやりとりに似たような経験を思い出すかもしれません。子供を叱りたくなる時、それは躾なのかせっかんなのか?それとも生活困窮してやむにやまれず手をかける?いずれにしても歪んでこじらせた愛情で子供に手を出してしまいたくなる気持も理解できるかもしれません。

現実でもニュースで流れる悲しい事件事故に一瞬耳を傾けても「明日は我が身」と振りかえる人のほうが少ないものかもしれません。

あすみは裕福で良妻賢母の体でいられる妻母嫁。息子・優の指摘されるとおり浮ついてなにもわかっていない感じがあり
裏切っている夫への感情よりも何事もなかったかのように演じることで事を収めようとします。

司令塔の夫の威厳がダメになればスミナガ先生の導きのまま生きれば幸せになると信じて疑わない。決定的な責任を負わないが家庭の維持再建が第一なのでもちろんイシバシユウ事件は眼中にありません。ただ光一君のお母さんの生き方はまぶしく感じますが「人生が違うのだから」となにか心のない生き方のように感じます。

リアリストでありながら大事なものを見落としているあすみは将来優に見向きもされなくなるだろうと予感させましたが、彼女は身を持ち崩さないのは怪しくとも救いを見つけたからでしょう。

シングルマザーの加奈は生まれ持った運のなさからか?貧困のハンデであらゆるトラブルを引き寄せます。イシバシユウの事件そのものより、同じシングルマザーで寂しさや貧しさに負けていた西山力也の母に誰の救いもなかった事、世の事件の背景を抱えている問題をよく考えるべきでは、と気づきを得ました。

3人の母の中で余裕のなさは随一でも、加奈が得た母として生きる力は問題をないがしろにしないという思考が生まれたのは、勇が社会から守られ加奈自身も児相に心のよりどころをみつけたからでしょう。

そして自分の人生を生きたい留美子のようなタイプが子どもを重荷に感じ、夫に不公平感を抱くのかもしれません。利害関係と損得勘定で夫と対峙する思いやりのない留美子思い通りにならない子どもへの暴力は読者にとって妻・母両方で適正に欠けると感じます。

同時に「自分も同じ感情を抱いたことはないか?」と留美子が「イシバシユウの母は自分だ」と感じるように読者にも戒めの感情も呼び覚ますような感じがします。ですが留美子はイシバシユウの母・耀子の感情を世間と共有したいという救いを作り出そうとしています。

もし児童虐待事件に自分が判決を出す立場なら?おそらく加奈のように考える人になればそこに至る経緯を考えると判決は重くとも簡単に答えを出すことはできないでしょう。

親子関係、子どもへの虐待は親の問題か?子どもの問題か?子育てしにくい社会の問題か?

女性に多様な役割を求められ負担の重い時代であってもなにかに事件の発生原因を追及するのは不毛だと思うのです。きっと親も子もその悩みトラブルに最も必要なのは何かの支援ではなく、家族以外の心の支えだからです。本来、お金も手間もかからず触れ合えてたソレは今もっとも得ることが難しいものになりました。

だから親子双方はやく気づかなければなりません。親も子も、家族への理想や希望、期待は不毛だと。愛情は相手への願いを産みいつか相手を縛ります。親離れ、子離れの家族それぞれを一人格として認め自立すること。寂しくともそれが心の支えを得られない人々の打開策のように思えます。

彼女たちの「ユウ」くん達の経験をどう乗り越えるのでしょう?どんな大人になるのでしょう?

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