『ABC!曙第二中学校放送部』あらすじと読書感想文の例

こちらでは、2016年の
「第62回 青少年読書感想文全国コンクール」中学生用の課題図書である
『ABC!曙第二中学校放送部』の「あらすじ」と「読書感想文の書き方の例」をご紹介いたします。(ネタバレ注意)


ABC!曙第二中学校放送部 
(講談社)274ページ
著者:市川 朔久子・著
本体価格:1,500円
ISBN978-4-06-219322-1

物語はアニメ「ラブライブ」と似たような廃部寸前の放送部を盛り返すために、友情や教師の確執、それぞれのトラウマと向き合いながら中学生らしく問題に挑んでいくという、読後感が健全でさわやかな物語です。

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『ABC!曙第二中学校放送部』の【あらすじ】

主人公のみさとはバスケ部を辞めて放送部に入部しました。最初は部長の古場君と2人だけ。このままでは来年には廃部になってしまう!しかしみさと自身あまりやる気がありませんでした。

2度も退部届を出すのが嫌だったからという動機だけで放送部に踏みとどまっていたのです。それが転校生の葉月や野球部を休部した新納、1年生の珠子が入部してから段々と心境が変化していく。

二人だけの放送部に少しずつメンバーが加わり、明るく張り切り屋の顧問と共に、コンクール目指して奮闘する部員たち。少しずつ明らかになる心の奥の小さな傷、友人とのいさかいや、頭の固い教師との対立など、いろんなことを経て成長していく彼ら。

【登場人物】

本庄みさと/放送部副部長、アナウンス担当、中3。バスケ部をやめて中途入部した。元バスケ部の亜美たちやのぞみと確執がありのぞみたち1年と先輩との間を取り持っていたのに自分が悪者になっていてバスケ部を辞めた。

真野葉月
みさとのクラスに来た転校生。みさとの勧誘でアドバイザーとして放送部に入る。見たことないくらいキレイな子だが影があり人を寄せ付けない。うるさいと感じた亜美に「ブス」というほど口が悪い。実は放送経験者で全国大会にも出た事がある実力者。だが選んだテーマで友達を傷つけた事を悔みもうアナウンスはしないと誓っている。本来は正義感が強く勝ち気。

新納基
みさとと同じクラスで放送部に入ってきた。野球部だったが肩を壊して休部中なので放送部に来た。背が180センチあり良い奴なのでみさとは気になる。

古場和人
放送部部長、中3.1年の時から放送部唯一の存在で機材担当。

小島球子
中1。やっと入った新人。機材希望

三田村
野球部部長、新納の友達。放送部にいつも風変わりなリクエストをしたり、アンケートに答えたりする。料理が得意。実は葉月が好きで遠巻きの自己アピールをしていたらしい。

澤村亜美とその仲間/みさととクラスメートで元同じバスケ部。何かとみさとの事をからかうにぎやかで目立つグループ。なにかとみさとの感に触るようなことを言ってからかってくる。

須貝友春先生
放送部の顧問で新任の先生。みさと家の隣のいつもはりきってるポメラニアン「ハル」に似ているので愛称ハル。明るくて突拍子もない事も言うけどたまに良い事も言って尽力してくれる良い先生。全国大会に出ることを勧めるが、古権沢先生に目をつけられて仕事をたくさん回されてしまい、過労で階段から落ちて骨折。放送部に行けなくなってしまう。

古権沢先生
担任、生活指導、部活動責任者。威圧感で生徒をビビらせ「古権沢には目をつけられるな」と新入生は先輩から教え込まれる。目をつけられた放送部は何かと因縁をつけられる。

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『ABC!曙第二中学校放送部』読書感想文の書き方の例文(ネタバレ注意)

中学生の課題図書で求められる文字数は、本文2000文字以内となっています。
※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

次の感想文は、空白をカウントせず、本文の文字数だけで2394字ありますので、字数はオーバーしていますが参考にしてください。

便利な文字数カウンター
 

『ABC!曙第二中学校放送部』を読んで

中学生って小学生から少し大人になったような気がしたのですが、やはりまだ中途半端な子供です。でも大人になる途中だから大人の扱いも起こる出来事も小学生の時代よりずっと難しく、悩みや嫌なことが一気に増えていると思います。それは友達感の悩みだったり、校則や教師との関係だったり、家庭だったり、その人の心の問題だったりと人それぞれでしょう。もしかしたら小学生時代には気がつかなかった問題に気がつくのが中学生という年齢なのかもしれません。

この物語は学校の中では存在すら知られていない廃部になりそうな放送部に成り行き上入部したみさとが、放送部の活動とを通して、友達やクラスメイトとの衝突、教師からの確執を経験しながら部員で全国大会に挑戦するというものです。放送、アナウンスの全くの素人のみさとが経験者の葉月とぶつかりながら友情を深め、お互い放送部での活動を通して一回りもふたまわりも成長する事が出来きます。

私が気がついたのはこの物語の隠れた大きなテーマは「片手の鳴る音が聞こえる人かどうか」という事だと思います。「片手の鳴る音」それは明るい須貝先生が『そんなの簡単だよ』と試しに片手で生徒として見せるハイタッチの事です。言われてみればそうかという問題ですが、分かる人と分からない人には人生観の違いほど対極あることでした。

須貝先生が放送部を「楽しいから」という理由で全国大会に出ることを勧めます。2人しかいなかった放送部に徐々に部員が増え、5名になったものの葉月以外ほぼ素人で葉月のスパルタに鍛えられながら大会を目指し、テーマや練習を重ねて行きます。ですが良いアナウンス、伝えたいテーマで作品を作り上げて行く途中にみさとと葉月の過去の友達との衝突、トラウマ問題と向き合う事になります。また部長の古場中心に「挨拶」をテーマに作ったラジオ部門の作品も『目をつけられるな』と言われていた古権沢先生に難癖をつけられ作品提出の前日にやり直しを命じられます。

そのみさとと葉月のケンカも、ラジオ部門の作品のストップもどちらにも共通しているのが他者との意見の相違です。みさとと葉月それぞれは友達に「良かれ」と思ってやった事でみさとは部活内でつまはじきにされ居場所がなくなり、葉月は幼馴染に『死ね、消えろ、あんたなんか二度と来るな』『わたしの気持ちがあんたにわかるの?お願いだから消えて、どっか言って』と言われ「私に関わらない方がいい」と自分を嫌う子になってしまいました。そして2人とも自分に自信がなくなった事や何が正解かわかならくなったのだと思います。

また古権沢先生に関しては「自分の意見は絶対」という姿勢があります。目をつけた放送部、須貝先生また他の先生にも強く制圧するような意見で時には狡猾に人を抑えつけます。中学生には教師と言う大人の言うことは正しい、逆らってはいけないという意識が根底にあります。でも私たちには分かるのです。この先生が、大人が自分たちの為に人として正しい事を指導しているのか?自分の都合で発言しているのか?がです。

みさとをつまはじきにしたバスケ部ののぞみ、そして放送部での活動をいつもからかう亜美グループも『せったい悪者にならないギリギリの線から、笑顔で石を投げてくる。痛いと、声をあげれば、今度は心外そうな顔をする。そのずれた感覚…まちがっているのは自分のほうなのか、とだんだんわからなくなってくる』とみさとに思わせ、やはり古権沢先生に近い人たちでした。

ですが葉月ももしかしたら、あやうく古権沢先生側の人間だったかもしれないとも思うのです。幼馴染を傷つけて罵倒されたその意味を理解できなかったら『あの子は正しくないから、こっち側に戻れるように助けてあげなくちゃっ』と見下したまま、相手の方を向くことができない人間になっていたかもしれません。きっとその違いは相手の声をちゃんと受け止める強さが必要で過ちを認められない弱い人にはできない事なのかもしれません。

生き方や考え方、人との接し方は難しいですし経験しなければ覚えて行かないのだと思います。でも色々な人間関係を経験していく途中にずっと上手くいくのは難しいのかも知れません。もし人間関係や考え方で壁にぶつかった時、それを認めなければ古権沢先生のような人に、壁にぶつかったままでそれを認めて受け入れなければ『死ね、ブス』と自分に言ってしまう葉月の状態になるのかもしれません。その人たちの態度は一見強いようだけど、イガイガして近づけない人になります。

ラジオ部門では失格になるのを分かった上で古権沢先生の目をごまかすために収録作品と提出書類を変えて提出します。当初作った通り彼らが思った『形式に頼らない。仲良くしたい、争いを望まない…そんな挨拶』をテーマにした作品です。失格になったものの部員の心は晴れやかで負けるが勝ちという表現をしていました。また最後、亜美にまたからかわれたみさとも『楽しいよ、放送部。でもバスケももっと、一緒にやっていたかった』と素直な気持ちを伝えた事で亜美を黙らせます。

『声は、伝えるためにある。だれかを黙らせるためじゃない』古権沢先生や亜美の声とここでのみさとの声はちがいます。みさとには相手を制圧したい気持ちではなく自分の素直な気持ちを伝える声だったからです。本当に強い声、伝わる話し方はとは私たち中学生も大人の声からその意図が分かるように、そこに本心があるかどうかなのだと思いました。

『片手の鳴る音』は誰かと一緒に聞く音です。片手の音を聞くには誰かと真剣に向き合い、共に闘い、何かを経験し気持を共有しないと聞くことはできません。自分の弱さを認め、誰かの気持に誠実に向き合わないと聞こえてきません。ですが『片手の鳴る音』をたくさん聞く事のできる人生はきっと明るいのだと思います。『片手の鳴る音』は実に気持の良い明るい音です。(2394字)


 
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読書感想文 課題図書2016一覧(ページ数つき)
 
では、感想文!ガンバってください!(^o^)ノシ
 

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