「一房の葡萄」あらすじと読書感想文の例文【3作品】
こちらでは、有島武郎の「一房の葡萄」の読書感想文を書く人のために、この本のあらすじや、参考していただけそうな着眼点(切り口)の例や感想文の例をご紹介しています。
おもに小学生が、800字~1200字程度(原稿用紙2枚~3枚)の読書感想文を書く際にて、参考にしていただけそうな考え方や書き方を紹介しています。
~~目次~~~~~~~~~~~~~~~
「一房の葡萄」について
「一房の葡萄」あらすじ
ここがポイント!着眼点の例
「一房の葡萄」読書感想文の例【3作品】
書きやすい読書感想文の構成の例
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「一房の葡萄」について・・・
読み継がれているのには訳がある!
主人公の「僕」は、絵が大好きなあまり、クラスメイトのジムの持っている絵具を盗んでしまいます。
しかし、そこのことが見つかり、僕の好きな女の先生から、優しく諭され、僕もジムと仲直りができます。
・・と、簡単に話の骨格を述べればこのようなシンプルな内容ですが、少年時代にだれでも経験しそうな「心の葛藤」や「罪がばれた際のみじめさ」などがデリケートに描写されており、とても教育的な内容です。
人生における「人間性を試されるような場面」を、本書は疑似体験できる、心の予行練習のための物語といえ、人生における「教訓」が学べる名作です。
「一房の葡萄」あらすじ
内容が7分で分かる要約した内容の朗読動画(再生速度は1.5倍速ぐらいがよいでしょう)
この作品は、全文朗読でも30分程度で読める内容ですので、以下のYouTube動画を聞くことで、全文の読書の代わりにすることもできます。(以下の全文朗読も、再生速度は1.5倍速なら、20分で完了します)
全文を、元NHKのアナウンサーが読み上げた朗読動画
以下のような着眼点を参考に自身の考え方を述べてみるのはいかがでしょうか?
たくさんの本の中から、なぜこの本を選んだのか。この本に惹かれた理由をはじめに紹介すれば、感想文の入り方としてはスムーズです。
自分にも、主人公の僕と同じような過ちを犯してしまった出来事を思い出し、僕と比較しながら、その時のことを考えてみましょう。
先生の優しさ、先生の僕に対する愛情が感じられた言葉をとり上げ、なぜ、その場面で優しさを感じたのかを述べてみるのもよいでしょう。
ジムが許してくれた理由を考え、自分の考えを述べてみるのもよいでしょう。ジムが許してくれたのは、きっと先生が、ジムにも僕の気持ちを上手に伝えてくれたからかもしれません。
なぜ作者は「葡萄」を選んだのか。葡萄はどのようなことを象徴したものかを考えてみましょう。(葡萄のようにクラスみんなが仲良くまとまるように・・など)
「この本の内容を父に話してみると・・・」といった切り口で、家族の意見を感想文の中で紹介し、その意見に対し感じたことを紹介する作戦もよいでしょう。
「あなたの顔を見ないと私は悲しく思いますよ。」という、先生の言葉は、何よりも僕になぐさめの言葉になったに違いありません。この先生のように、相手の心をなぐさめ、正しい方向に導く人をどのように感じましたか? そして先生から学んだことは何だったかを、感想文に書くのもよいでしょう。
「著者はこの本を通じて、読者に・・・」のように、著者がこの本で伝えたかった内容を推測し、自分の意見を述べるのもよいでしょう。
「一房の葡萄」から学んだ教訓とそれを生かすための「自分が生活の中で心掛けるべきこと」を発表する感想文もよいでしょう。
この本を読み、今後はどのような点を改善したいと思ったかを、これまでの自分とこれからの自分という形で比較しながら発表してみるのもよいでしょう。
読書の価値に気づいた点があれば、そのことを感想文の中で紹介するのもよいでしょう。
・・・これら中からいくつかを引き合いに出し「自分の考え」や「過去の思い出」などとからめて解説してみましょう。
学校などの教育機関が与える課題は「教育的成果」を期待してのものです。そのため、教育機関からの課題としての読書感想文を書くにあたっては「どのような学びを得ることができたか」を感じ取れる感想文にすることが大切です。
つまり、教育機関からの課題としての感想文は・・
・・の意味だからです。そのような方向性(どのようなことが勉強になったか)を意識して、伝える内容や構成を考えてみましょう。
「一房の葡萄」読書感想文の例【3作品】
以下に3作品をご紹介いたします。文字数はまちまちですが「書き方」や「着眼点」の参考にしていただければと思います。小学生ではまだ習っていない漢字も含まれているため、その部分も平仮名に直したあとの文字数で、規定の文字数に合わせてください。
「一房の葡萄」を読んで①
なぜ私が、この本を感想文の題材に選んだかというと、本好きの叔父さんに「一房の葡萄ってとても考えさせられる内容だよ。」と言われたためです。叔父さんは、たくさんの本を読んでいるので、その叔父さんが言うならと思い、感想文の題材に選んだわけです。
⇒読書感想文の書き出し例(入賞21パターン)
読み終えた後、叔父さんの言ったことは本当だと感じました。主人公の「僕」は、絵を書くことの好きな少年で、西洋人の多い学校へ通っていました。少年の持っている絵の具では、あい色と洋紅色はうまくだせなくて、友達(ジム)のとても美しいあい色と洋紅色を迷い迷って取ってしまいます。
私はこのような経験をしたことはありません。現代は、欲しい物を何でも買ってもらえるから、絵の具がなくなるような事件はおきないでしょう。また、たとえ絵の具がなくなっても、こんなもん、また買ってもらえるからいいや。などという気持ちが強くて、やはり事件にはならないでしょう。
クラスの落とし物箱には、シャツから、くつ下からなにからなにまで落ちています。そして気がついても取りにこない人が多いです。本当にどんなに私達の生活がぜいたくなのかということをつくづく思いました。先生との約束をまもって学校へきた少年の勇気と、それをゆるしたジムの心の広さにとても感動しました。
もし私が少年だったら盗んでしまったことを後悔して、いつまでも泣き続けたと思います。また私がジムだったら、相手をみんなで軽蔑し、仲間はずれにし、悪口を言い続けたと思いました。それは「悪い事は、ぜったいに悪い。」と思うからです。
しかし、この本を読んで、自分の考えは少し幼ちだったと、恥ずかしく思いました。友達をにくんだり、悪口を言うよりも、相手の気持ちを分かってあげて相手をゆるしてやることがなによりもりっぱだと思いました。
私には友達がたくさんいます。みんな仲がよく、めったに喧嘩はしません。しかし時々、いくつかのグループに分かれ、お互いどうし、無視したり、にらみつけたり、人の心を傷つけるようなことを、平気で言い合ったりすることがあります。
そのような時、私の心は一番暗く悲しくなるのです。また、昨日まで仲のよかった友達が、急に冷たく思えることがあります。そのような時、相手の言葉使いや態度にだけはらをたてていた私は幼稚でした。これからは「一房の葡萄」のジムのような素直な気持ちで、友達を大切にしたいと思います。
そしてこの先生が「一房の葡萄」をあげたのは、葡萄というのは一房にたくさんの実がついている。クラスもこの一房の葡萄のように、まとまって欲しいという願いが込められていたと思います。
これから友達の中で、トラブルがあった時、私はこの一房の葡萄の本を思いだしたいと思います。(1116文字)
「一房の葡萄」を読んで②
この本を読み終えた私の率直な感想は、次のようなものでした。それは・・・
「先生の優しい心くばりに感動」です。
⇒読書感想文の書き出し例(入賞21パターン)
自分は持っていないで、欲しいなあと思っているものを、ほかの人が持っているとき、本当にうらやましいなと思うことがあります。だから「僕」が絵の具を欲しがった気持ち、欲しくてたまらなくなった気持ちはよくわかりました。
僕は絵を描くことが大好きですから、なおさら欲しくて仕方がなかったのでしょう。僕が「パパやママに絵の具を買ってくださいと、なんだか臆病になって言えなかった」というのも、なんとなくわかるような気がしました。
僕が、ジムの絵の具が入っている机に、吸い寄せられるように行くところは、こっちまで、胸がドキドキするようでした。その後で、先生の目を見るのが、イヤだったというのも、よくわかるような気がしました。自分にやましいことがあると、先生に限らず、両親の顔もちゃんと見られないということがあります。私にも、そんなときがありました。
僕は若い大好きな女の先生の前に、ジムたちに連れて行かれます。僕は、とても辛かったと思います。その女の先生が、次の授業に出なくていいといい、僕のひざの上に一房のぶどうをおいて出て行ったというところは、先生の優しさが感じられていいなあと思いました。少しやせて、背の高い先生の笑顔は、きっと美しかったにちがいありません。
僕は次の日、学校へ行くのがイヤでたまらなかったのですが、先生の優しい目で見られたいと思って、勇気を出して登校します。ジムが、親切にぼくの手を引いて、先生のところへ連れて行ったのには感心しました。先生はジムに、やはり優しく、絵の具を欲しがった僕の気持ちを説明したのでしょう。
二人は握手したのです。とても気持ちのよい話で、こんな先生に会えた僕が羨ましく思えました。読んでいる際、先生の白い手と葡萄は美しい絵のようだと想像しました。(788文字)
「一房の葡萄」を読んで③
「やめな、やめな、お願いだからやめな!」「早くその絵の具を元の場所に戻して!」・・・私はハラハラしながら主人公の「僕」に精一杯このような声をかけていた。
⇒読書感想文の書き出し例(入賞21パターン)
「どんなにきれいな物でも、どんなに欲しい物でも人の物は取っちゃいけないよ。」「僕」がジムの絵の具をポケットに入れた時、私は胸が痛くなり心臓を握りつぶされたような気持ちになっていた。
目の前が真っ暗になり重い塊が胸に残っていた。「僕」は海の景色を本当の海に見えるように描きたかったんだ。そのためにはどうしてもジムの絵の具が必要だと思いこんでしまった「僕」の気持ちが、私にはとってもよくわかる。小学校一年生の時、見たまんまの空の色画用紙に写し出そうとした。
しかし十二色の絵の具しか持っていなかった私。どんなに見ても絵の具箱の中には私の欲しい空の色はなかった。二十四色絵の具を持っている友達がいた。水色系でも何種類もの色があった。その子の描いた空は本物のように見えた。
その時の私の気持ちは「僕」と同じだった。その子の絵は、その空の色だけでとっても素敵にそして素晴らしく上手に見えた。私はその子の絵の具が欲しかった。しょうがなく水色と白を混ぜて作ったけど、私の空とはちがうと思った。「僕」と同じようにその空の色だけで私の絵はすごく下手に見えると思った。
でも今はちがう。空の色で下手に見えたんじゃない。絵が下手なだけだったんだ。あの絵の具さえあれば、自分の絵はもっと美しくなるといって自分の絵の具をばかにしていた「僕」。自分の思うように描けないのを絵の具のせいにしていた「僕」と私。
今でも私は習字がきれいに書けなかったら「筆が悪い、この筆ダメだな」と筆のせいにするし、勉強が分からなかったら「あの先生の説明はよくわからない、教え方が悪い」と先生のせいにする。わからなかったら、わかるまで先生に聞きにいけばいいのに、わかるまで教科書で調べればいいのに、そんな努力をちっともしないでいる私。
それは結局、現実の自分の姿を見ようとしないで自分を甘やかしているだけだと思う。「僕」だってそうだ。友達ができないのは、自分から努力して話しかけにいったりしないからだ。みんなに話しかけていく勇気があれば「ジムちょっとその絵の具かして」と言えたかもしれない。
「僕」は弱い子だといっているけど心まで弱くなってはいけない。「僕」は苦しんだだろう。物をぬすんだうえに大好きな先生を悲しませてしまったのだから。「僕」の心と向かいあって話をしてくださった先生。普通の先生なら訳も聞かず、頭ごなしにおこりまくっているのにと思う。
ジムやクラスのみんなも偉いな。私達なら「うそつきの泥棒が来たぞ。」と言ってないしょ話をしたり、いじめたりしてるかもしれない。私だったら絵の具をぬすんであやまりもしない相手を簡単に許さないと思う。
ジムも最初はそんな気持ちだっただろう。だけど待っていたように走ってきたのは、ジムだった。そして「僕」の手を握ったのにはびっくりさせられた。何もなかったようにギュッと握られた手は、心の中でずっと結ばれたままでいるのだろう。
ジムや「僕」といっしょに私も手を握っているような気持ちになり、心の中がスカッとなった。ジムは「僕」が思っていることがわかったんだ。口に出さなくても思いが伝わる友達がいるということはとても幸せなことだ。「僕」を許し、受け入れてくれたジムやクラスのみんなも一つ心が大きくなった。
心をひらくと友達がふえ、物の見方がかわり、人を許し信じることもできるのだ。やさしかった先生の真っ白い手の上にのった葡萄は買ってきた物ではなく、自然の光を受け、雨や風にさらされ、時には鳥につつかれて育ってきた葡萄だった。だからこそ甘くおいしかったのだろう。
私は祖父の作っている葡萄を思い出した。おいしい葡萄を作るために心を傾け、一房一房いつくしみながら手間をかけて育てている。「僕」が先生からいただいた葡萄は、あふれる愛情を表していたのだ。弱虫で自分のからにとじこもっていた「僕」だけど、先生やジム達のおかげで一歩ふみ出すことができた。
そして私も、楽な方へ流れようとしている自分の生活態度に気付き、心機一転、自分を甘やかすのはやめると決めた。そのうえ、少し物の見方をかえるだけで、自分の世界を広げられるという事にも気付いた。
一本の空の色の絵の具にあこがれた私だったけど、今では自分で色を混ぜて作った方が素敵な私だけの空の色ができると思っている。
これからも心が弱くなり、人の物がよく見えたり、うらやましく思うことがあるかもしれない。でもそんな時こそ自分の心の奥深くをのぞく勇気を持ち、自分の弱さ・悲しさを認めたうえで、自分の可能性・強さを信じ、ありったけの努力を続けよう。私の色は私が作るべき、そう考えるからだ。(文字数1967)
人生における「試される場面」で誤らないために
読書で「心の予行練習」をしておこう。
書きやすい感想文の構成の例(書き方の順序)
書きやすくまとめやすい標準的な読書感想文の構成例をご紹介いたします。
感想文は「順序だてて説明するもの」だと思えば比較的楽に書けるものです。
①なぜこの本を選んだのかの説明
⇒ 読書感想文の書き出し入賞21パターン
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②大まかな内容を手短かに説明
③特に気になった箇所やフレーズを紹介(1)
なぜ気になったのか最近の出来事や自身の思い出とからませて説明
④特に気になった箇所やフレーズを紹介(2)
なぜ気になったのか最近の出来事や自身の思い出とからませて説明
⑤特に気になった箇所やフレーズを紹介(3)
なぜ気になったのか最近の出来事や自身の思い出とからませて説明
⑥著者がこの本を通じ伝えたかったことを想像し考えを書く
(伝記の場合はその人のどの点が立派だったのか)
⑦この本を読む前と読んだ後とでどのような考え方の変化があったか
この本によって発見したことや反省させられた点など「本からの学び」を説明
読む前の説明→ 「この本を選んだ理由」「読む前の私」「本の概要」などの説明
読書中の説明→ 読んでいる最中に「感じたこと」「思い出したこと」などの説明
読書後の説明→ 「学んだこと」「反省したこと」「読んだ後の私」などの説明
読書感想文の書き方のコツ
(テンプレートつき)
書き方の参考用に、過去の入賞作品の紹介ページも作りましたのでご活用ください。
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