【羊と鋼の森】読書感想文あらすじ・例文(ネタバレ注意)

【羊と鋼の森】のあらすじと感想文の書き方・例文の紹介です。

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【内容情報】
2016年「本屋大賞」を受賞した宮下奈都のベストセラー小説が「羊と鋼の森」です。

ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、
人として成長する姿を
温かく静謐な筆致で綴った、
祝福に満ちた長編小説。

2018年6月に映画として公開される本作は派手な大冒険や事件は起きないものの、その表現の美しさや深い言葉が人気で映画化されるのは本書ファンも主演の山崎賢人ファンからも多きに期待されている作品です。

   
  

【羊と鋼の森】こんな人にオススメ
本作は大きな事件が起きるわけではありません。本作の評判の良さ、本屋大賞に選ばれた所以は描写の素晴らしさです。
ピアノに無縁の人でも自然にピアノの音を想像できてしまう描写。と言われています。逆を言うと最初の数ページでそれを感じ取れないようなら、この本との相性が良いとは言えないでしょう。
とは言え、映画化されますので読書感想文を書くには適しています。映画→原作本の順なら日頃本を読みなれない人でも描写想像が楽になり、原作本の魅力をより深く感じ取れるかもしれません。特に将来の夢に迷う10代20代の若者や人生に迷う中高年にも伝えたい言葉「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ」には心が突き動かされること間違いなしです。

簡単に読める度★★★★☆
簡単に書ける度★★★★☆

・将来の仕事について考えたい中学生以上の学生
・山崎賢人のファン
・ピアノなど音楽に恩恵のある人
・小説の行間を読むのが得意な人
・優しめなお仕事小説を読みたい人
・職人気質な人
・優しい世界が好きな人
・村上春樹テイストが好きな人
  
こちらでは
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【羊と鋼の森】登場人物と映画キャスト
【羊と鋼の森】あらすじ(ネタバレ注意)
【羊と鋼の森】読書感想文の入賞作品
  &おすすめレビュー

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【羊と鋼の森】登場人物と映画キャスト

登場人物
外村直樹(とむら・なおき) / 山崎賢人
江藤楽器で働くピアノの調律師。北海道山村出身でピアノの音を聞くとふるさとの森を思い出す。強い感情や意思を持たずに育ち、弟と確執があったがピアノに出会って変わっていく。

柳 伸二(やなぎ・しんじ)/ 鈴木亮平
江藤楽器の調律師。外村に一番アドバイスをくれる親切な7年上の先輩。

秋野(あきの)/ 光石研
江藤楽器の調律師で元ピアニスト。手厳しい事を言う。ピアノ経験者として音に美学がある。

佐倉和音(さくら・かずね)/ 上白石萌音
ピアノに取り組む女子高生で双子の姉妹の姉。妹より性格もピアノもおだやか。子供のころから江藤楽器にピアノの調律を依頼している。

佐倉由仁(さくら・ゆに)/ 上白石萌歌
和音の双子の妹。姉と比較して性格は明るくピアノも華やか。ある時からピアノが弾けなくなってしまい…。
 
北川みずき/ 堀内敬子
江藤楽器の事務員。外村を気づかってくれる。

濱野絵里/ 仲里依紗
柳の婚約者。柳を見守ってきた。

上条真人/ 城田優
ジャズバーで演奏するプロピアニスト。

南隆志/ 森永悠希
ピアノを弾けなくなってしまった青年。

外村キヨ/ 吉行和子
外村直樹を厳しく?見守る祖母。

外村雅樹 /佐野勇斗(M!LK)
外村直樹の優秀な弟で兄にコンプレックスを持たせる。

板鳥(いたどり)/ 三浦友和
江藤楽器のベテランの調律師。外村が調律師を目指すきっかけを作った寡黙な一流調律師。

【羊と鋼の森】あらすじ(ネタバレ注意)

 

主人公・外村(とむら)は北海道の山村出身の高校2年生。
卒業後は何となく就職して生きて行けばいい。そう思っていた外村の運命を変えたのは、ピアノ調律師である板鳥の仕事を見たからだった。

ピアノの音が変わっていくのに不思議な感動覚え、まるで秋の夜の森の匂いのような森の景色を奏でるような錯覚にとらわれる。「よかったら、ピアノ見に来てください」と板鳥から名刺をもらい一度だけ店を訪ね、板鳥に紹介された調律師の本州の専門学校へと進んだ。ピアノにもクラッシックにも無縁で、音感が良いわけでもない外村は板鳥の所属している江藤楽器店に就職することができた。

新人調律師として毎日、仕事の後には店のピアノで調律の練習をするが、上達する実感が持てない。
多忙の板鳥にはなかなか出会えなかったがアドバイスをもらうと「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです」と声をかけてくれるがその正しいこつこつがわからない。「この仕事に、正しいかどうかという基準はありません。正しいという言葉に気を付けた方が良い」「こつこつと守って、こつこつとヒット・エンド・ランです」「ホームランを狙ってはダメなんです」わかるようなわからないような板鳥のアドバイスだった。

お客さんのピアノを調律させてもらえるようになるのは、早くて半年後と7年先輩の柳が教えてくれた。
調律の仕事にも「向き不向きはある」「調律に大事なのは調律の技術だけじゃないから」と教わり技術以外まで手が回らない。と不安な外村に「堂々としていればいいんだ」と柳は笑った。外村はコツコツクラッシックを聴くようにした。

初めての調律は入社して五か月過ぎた頃、柳について補助名目の実際は見学だ。
佐倉家の双子女子高生、姉の和音の静謐なピアノと妹の由仁の弾むようなピアノは全く違ったが由仁の希望に沿う明るく響く音の調律をした。外村は姉の和音のピアノの方が好きだった。

柳はお客さんの音の好みを丁寧に聞く調律だった。厳しい秋野は客に最もふさわしい音につくる調律。ピアニストを目指していた秋野の「へたに精度を上げると普通の引手は弾きこなせない」との言葉に本当かどうかわからないが秋野にだけ見えている風景のような気がした。

柳が彼女にプロポーズをすると直帰した日、外村は双子の由仁に呼び止められ調律を頼まれ、ついでに好みの音が出るように調整を頼まれかえってピアノの状態を悪くしてしまった。柳に事情を伝え複雑な感情を抱えて店に戻ると、板鳥がいてつい「調律ってどうしたらうまくできるようになるんですか」と問いてみる。板鳥は答える代わりに愛用のチューニングハンマーを譲ってくれ励ましてくれた。

板鳥がめざす音は小説家の原民喜の文体
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のように確かな文体」

その言葉にしびれ私の理想とする音をそのまま表してくれていると語った。
柳と行った手入れされてこなかった古いピアノを依頼主は元に戻して欲しい希望だった。柳は「依頼主が欲しいのはしあわせな記憶…あのピアノが本来持っていた音を出してやるのが正解」と言う。外村はそれが正解かわからないが依頼主の想定の範囲でしか仕事できないのは辛いと思った。

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入社2年目
音を整えることはできるようになり、一般家庭の調律は行けるようになった。
ある日、外村は板鳥の同行でコンサートの調律へ行くことに。
秋野からは「おめでたいよなあ」と揶揄されたが、板鳥が調律し直したホールのピアノは途端に艶が出て鮮やかに伸び音楽になっていくのが目に見えるようだった。外村はこの音を求めていたのだと思い活力を与えた。

秋野に外村は「僕じゃ(板鳥の同行は)もったいなかったです」と秋野ならもっと多くを学べただろうと感じた。その秋野の事を柳に聞くと、口悪いが実際は手を抜けないいい仕事をする、ピアノに愛と尊敬を持っていると話した。
外村は板鳥がこの町に留まるのは惜しいと社長に言うと「都会の人が飛行機に乗って板鳥くんのピアノを聴きにくればいい」と言われ山と町、都会と田舎など価値とは何の関係もない基準に囚われていた自分とここでやる誇りを持たなくちゃいけないと気づいた。

1人で調律に回るようになった。
客から明るい音にとの希望をよく言われ時代と共に基準音も少しずつ高くなっていると柳と話していた。秋野は調律ばかりに明るい音を頼るのではなく、演奏の技術の必要性を話していたそうだ。
精魂込めて手を尽くしてもよろこんでもらえず、大概は反応がない。だが適当でもほめられたりありがたられたりが続くと虚しくなる。適当の提供も間違いとも言えなくなるが、本当に素晴らしい音に出会える可能性を目指していかなければと思う。
外村は元々実家に居心地の悪さを感じ、家の裏の森に抜け出し心を静め、許される感覚を感じていた。それはピアノの中にも同じ、許しや世界と調和する感覚を見ていた。
ある日柳の組むバンドライブに招待され行くと彼女の濱野から昔の柳の話を聞かされる。元々は繊細すぎて世界が汚く見え布団をかぶって寝るような子だったが、メトロノームの正確なリズムが心を落ち着かせると発見したと聞き、柳は今のピアノを調律して音を作るその気持ちで自身を立たせ歩かせていると知った。

まだ外村はクレームをつけられる事もあり、そんな時は柳と共にやり直しに出かけた。柳は客から外村を庇い「頑張ってるのは無駄じゃない」と言うと「無駄かどうか考えたことがありませんでした」という外村。柳は「無駄という概念がない…外村はなんにもしらないそれがすごいと思う」また「無欲の皮をかぶったとんでもない強欲野郎じゃないか」と言われる。
だが、やはり自分の何が出来ていないのか、足りないのか、わからないことが怖く、才能が試される段階に到達もしてない。柳は「才能とはものすごく好きだという気持ちなんじゃないか」と静かに言った。

また、秋野の調律を見せて貰えるよう渋々承諾をとり、誰よりも速く無駄なく正確に作業する秋野に驚く。
秋野の調律は迷いがなく速い。「50ccバイクを乗る人にハーレーは乗りこなせない。ピアノもすごく反応よくしたら技術のない人はかえって扱いづらい」「…響かないように鈍く調整している。我慢して」とできるのにやらない秋野の技術もピアノも持ち主にも「もったいないです」と外村は言ったが返事をしなかった。町にフランスの人気ピアニストが来ることになった。

ただしピアノのトップメーカー「リーゼンフーバー社」のピアノのあるホールでそこは調律師も自社から派遣する。一流技術者たちだが態度が悪いことも有名だった。

柳はメーカーの文句を言いながら調律師にも目指す場所はあると言うと、秋野は「一流のピアニストに自分の調律したピアノを弾いてもらいたい気持ちは全員持っているが、それができるのはほんの一握りの幸福な人間だけ」と言った。外村は秋野が本当は違う事を言おうとしているのではないかと思いつつ、自分はその気持ちをもっていない気がした。

双子の家から調律のキャンセルが来た。由仁がピアノを弾くことができなくなり外村は「和音のピアノが残りますように」と願ってしまうが、しばらく依頼は途絶えてしまう。

新規の調律に外村は行った客は、目を合わせようともしない外村と同年代の男性・南が出迎えた。
ピアノは日常的に弾かれてはいる様子だが全て音が狂っていて、ピアノの内部からは埃や様々なモノが出てきて南の笑顔の少年時代の写真もあった。直せるか不安であった外村は笑みも言葉も視線も合わない上下スウェット姿の南だが、またピアノを弾こうとしているのだと、希望を見出し出来る限り良い状態を目指した。

試し弾きをした南は調律したピアノの一音に驚き、やっと外村と目を合わせ、笑いながら大きな犬種の子犬が見えるような子犬のワルツを嬉しそうに弾いた。こういう子犬、ピアノもあると外村は拍手を贈った。
人にもピアノにもそれぞれふさわしい場所がある。南青年を何度も思い出しながら外村は音楽は人生を楽しむためのものだとはっきり思い、コンサートチューナーより目指すものは別のところ、ひとつの場所じゃなく、ひとつの状態なのではないか。原民善のあの一節が目指すところと再確認した。

祖母が亡くなり、実家のある集落でささやかな葬儀をした。
久々に弟に会い、自分は弟に気を遣い聞き分け良い兄だが、優秀な弟の方が母と祖母に愛されていたと思う。だが弟は外村を「昔から大きなことを言ってびっくりさせられてた…世界とか、音楽とか、兄貴が扱う相手はいつも大きい」「ばあちゃんが、(兄)小さい頃から森が好きで、迷っても必ず一人で帰ってきたから大丈夫だって…ばあちゃんは兄貴が自慢だった」と祖母の思いを初めて知り2人で泣いた。遠ざけていたものが僕の中に飛び込んできて世界の輪郭が濃くなった気がした。

双子の由仁がキャンセル依頼久しぶりに店に報告に来た。
自分がピアノを前にすると指が動かず弾けない病気になったことで和音もピアノのある部屋にも頑として入ろうとしない「私が病気になったことを怒っている」と。泣きそうになりながら由仁は相談をした。
話を聞いていた秋野は昔、よくビルの屋上から落ちる夢を見て寝汗と恐怖で目を覚ましていたが、その夢に見切りをつけるように最後夢の中で自分から飛び降りたら寝汗もかかなかった。そしてその日に調律師になる事を決め、そこまで行くのに4年かかったと。

ピアニストを目指していた秋野は由仁がピアノをあきらめるのにそれくらいかかるだろうと教えてくれたのだ。そしてピアノを諦めた理由は「耳が良すぎて一流のピアニストと自分のピアノの決定的に違い、その溝が埋まらなかった」と語った。

半年後、双子の佐倉家から調律の依頼が入り柳と外村も一緒にと同行することに。
佐倉家の防音は厳重過ぎてもったいなさを感じ、防音カーテンを開けて音のテストをした外村に柳から「わがままで、こどもだ」と言われる。弟への遠慮で色々な事にどうでもいいと思ってきた自分が、やっとわがままを通すのだから、その自分の気持ちは信用しようと思う事にした。

調律の確認でピアノの前に座った和音の背は毅然とし「私、ピアニストになりたい」と静かな声に確かな意志で言った。母親は「ピアノで食べていける人なんて一握りよ」に和音は「ピアノで食べていこうなんて思ってない。ピアノを食べて生きていくんだよ」と言い前からこの子の中にあったものが、由仁が弾けなくなったことで顕在化したのだと思う。
数日後、ミニリサイタル用の会場準備中にふたごが楽器店に遊びに来て和音が発表会用のピアノを試し弾きする。

社長が和音のピアノに興奮し由仁は「調律師になりたいです。和音のピアノを調律したいんです」と言った。
外村が17歳の頃に、板鳥に出会い人生が立ち上がった。和音の本気は外村も励まし調律師になると決めたあの喜びをはっきり思い出した。板鳥から外村の調律を「急によくなりましたね。音が澄んでいます」と褒めてくれた。

 
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入社3年目になった。
クレームもあるが、そろそろ初めてじゃないお客も増えてきた。
客から「ピアノを大事そうに愛おしそうに扱ってもらえてうれしかった」と言われ柳は「外村の実力だよ」と言われた。秋野は板鳥の一般家庭の調律同行を勧め、板鳥の調律は信じられないくらいいい音を出すようになり、ピアニストの中にない音は弾けない技量がはっきり出る恐ろしいビアノになると言う。秋野は板鳥の調律でピアニストを諦めたのかもしれず、自分とは違う気持ちで板鳥を見ているという気がした。

外村はまたキャンセルされた。秋野は「才能がなくたって生きていけるんだよ。時間をかければ見えなかった何かがいつか見える。でも早く見えるより、高く大きく見える事の方が大事なんじゃないか」と言った。板鳥は調律師の一番大事なモノは「お客さん」と答え自分はどうだったろうと考えた。

柳の結婚結婚披露パーティーでは和音がピアノを弾き、外村が調律を担当することになった。
前日のうちに調律を済ませ、当日早朝の和音リハーサルは問題なかったが徐々に精彩を欠き始めた。原因は会場準備が進み空間に音を吸収・反響するものが増えピアノの響きが変わってしまったからだ。調整できるか。間に合うか。絶対に間に合わせなければならない。

「明るく静かに澄んで懐かしい文体」小さな声で口にしながら、黒いピアノの前に立つ。
「少し甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体」森の上に光る星座。その光を目指して調律していく。
「夢のように美しいが現実のように確かな文体」今まで培ったすべての経験を総動員して、和音が弾くピアノが一番美しく響くよう外村は調律していく。

ドレスをまとった和音が結婚行進曲を奏でる祝福の曲。「ピアノ、いいんじゃない?」秋野から初めてほめられた。
外村は和音のためだけに調律していたことを間違いだったと思った。ピアノはみんなに届かせなくてはいけなかった。コンサートチューナーを目指さないと思ったのは誤りだった。板鳥は的確なアドバイスをし「和音さんのピアノの美点を助けてあげなくては。もっと和音さんを信頼してもいいですね」「ピアニストを育てるのも調律師の仕事です」と。

秋野は「もしかすると、外村くんみたいな人が、たどりつくのかもしれないなぁ」「うん、なんというか、まっとうに育ってきた素直な人。外村くんみたいな人が、根気よく、一歩一歩、羊と鋼の森を歩き続けられる人なのかもしれない」
板鳥「外村くんは、山で暮らして、森に育ててもらったんですから」

外村は、この道で間違っていないのかもしれない。この道を行けばいい。何もないと思っていた森で、なんでもない風景の中に、すべてがあったのだと思う。隠されていたのではなく、ただ見つけられなかっただけだ。安心してよかったのだ。僕には何もなくても、美しいものも、音楽も、もともと世界に溶けている。
  

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【羊と鋼の森】読書感想文の入賞作品&おすすめレビュー


本作で感想文を書くポイントとは「出来事」ではなく「心情」です。
山村出身の特になにもない青年が調律に心奪われるようにその道に進み、何もわからない中、1歩ずつ、何に触れて、感じて、成長していく様子。その静かに情熱を燃やす様子が美しく、主人公や登場人物たちそれぞれの調律への情熱に何を感じたかを書くと良いでしょう。
 
読書感想文の例・・・
「羊と鋼の森」読書感想文入賞作品
  (PDF形式です。スクロールして3ページ目に掲載)
 

「羊と鋼の森」おすすめの感想・レビュー
タイトルが択一
「羊と鋼の森」この奇妙なタイトルの意味が全く検討がつかなかった。
読み初めてピアノの調律師の話だとわかり、それだけで非常に興味をそそられる素材だと思った。
調律師という仕事に入った若者が悩みながらも着実に成長する姿は爽やかで音楽的素養のない私でも美しい音について語る登場人物たちの思いは感じ取ることができました。主人公が育った森が「羊、鋼」からなるピアノと同化していて、絶妙なタイトルだと思います。
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■主人公が出会いと成長に感激
読み始めた途端引き込まれてしまいました。
ピアノの調律師と言う特殊な職業を通して、若者が成長してゆく姿が見事に描かれていました。
山で生まれ森の中で育った主人公は、どうも周りに友達らしき人はいないようです。

そんな中、3人の個性的な同僚たちと少しづつ、いろんなトラブルを経ながら、心を通わせ同僚としていろんな形でサジェスションをしてくれます。そして何よりも、双子との出会いが主人公を何よりも成長させ、彼の道を定めます。
「調律」とは何か?

彼は悩み続け苦悩する中で、彼らからいろんなものを受け取り掴んでゆきます。「調律」の要素として、ピアノがあり、楽器の据え付けられている環境があり、そして何よりも演奏者がいます。カーテン1枚で、音の吸収は大きく変わってきます。演奏者の弾き方を最大限生かすためにも「調律」は変わります。今まで全く知らなくて、初めてそういうものかと思ったのは「純正律」と「平均律」の話です。和音をきちんと聞かせるには、「平均」に調律しては正確ではないというのです。又、音楽で使われる音は、少しづつ高くなっているということも知りませんでした。

…見事に主人公は「成長」してゆきます。開いた瞬間から「私にとって大切な本」になる予感がした。これからも何度もこの本を開くだろう。きっと人生に迷ったとき何度でも私を支えてくれる本に。
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■主人公の一途な努力が眩しい
高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村。念願の調律師として働き始め、苦しみもがきながらも個性豊かな先輩や、双子の姉妹に出会い成長していく。
主人公・外村の苦悩と成長を描いているこの作品。物語は実に淡々と進んでいくが、読みやすい文章と丁寧な情景描写につい引き込まれて、あっという間に読了。外村の調律師という仕事に対する真面目さは眩しく、何気ない会話の中で時折表れる名言にハッとさせられる。
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■静かで熱い物語
調律師になった主人公が、調律師の仕事に悩み戸惑いながらも、コツコツ取り組み成長していく姿に胸を打たれました。
「好きこそものの上手なれ」とはよく言いますが、この青年は本当に調律を愛しているんだなぁと思いました。だからこそ自分の調律の技術の未熟さに苦しむことも多いですが、決して諦めずコツコツと技術を磨き続けます。
主人公の他にも同じ職場の調律師の方々も調律に対してそれぞれ調律の方法やこだわりが異なり非常に熱い気持ちを持っており、お客さんも求める音は様々で非常に奥が深い世界。ピアノに特別な思い入れのある方ばかりです。ピアノの調律の世界はまるで森の中を歩いているみたいな音の中を彷徨っているような感覚。大きな盛り上がりがあるような作品ではないのですが、静かで熱い物語だと思います。
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■自らを振り返って
内省的で生真面目な彼は、真摯に仕事に取り組む。そのひたむきさに触れ、自らの人生を賭したいと思うものに出会えている幸せ、やるべきことが見つかっている幸せを感じることができた。
私自身に当てはめてみる。
今の仕事、元々やってみたくて始めた仕事だった。もっとやろう、彼みたいに。少々慣れてきて、惰性になっていた部分があった。初心に戻ろう。こんな気持ちにさせてくれた。
外村は職場の憧れの調律師である板鳥に
「調律って、どうしたらうまくできるようになるんですか」(p.61)
「板鳥さんはどんな音を目指していますか」(p.64)と尋ね、
先輩調律師の柳に
「あの、怖くなかったですか。駆け出しの頃、もしもこのまま調律が うまくならなかったらどうしようかと思いませんでしたか」(p.137)
「調律にも、才能が必要なんじゃないでしょうか」(p.138)と尋ねる。
こんなにもまっすぐにぶつかっていく外村がまぶしく、懐かしい。私もこんなこと考えていたなと思いつつ、答えが私の中で出ていない問いもあることに気付く。忘れていた初心を思い出させてくれる良作だった。
「この仕事に、正しいかどうかという基準はありません。 正しいという言葉には気をつけたほうがいい」(p.21)
「知らないっていうのは、興味がないってことだから」(p.39)にも惹かれた。
魅力的な言葉が散りばめられた作品でもあった。

「羊と鋼の森」タイトルの意味は?

結末が近づいたころに秋野さんがタイトル回収した「羊と鋼の森」という言葉。
これは単純に考えれば「ピアノ」そのものを意味しています。
・羊=ピアノの弦をたたくハンマーには羊毛フェルトが使われている
・鋼=ピアノの弦のこと。鍵盤に連動してハンマーが弦をたたくことでピアノの音が出る
・森=ピアノの主な材料は木材
 

映画主演の山崎賢人は「四月は君の嘘」ではピアニストの役をやっていますから、どうもピアノには縁があるみたいですね。今回の調律師役にも期待できそうです。
 

もう読むしかないでしょう!

   

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