『こんぴら狗』読書感想文の書き方【例文2作】
こちらでは、2018年の「第64回 青少年読書感想文全国コンクール」)小学校高学年の部の課題図書
『こんぴら狗(いぬ)』の「あらすじ」と書き方のポイントをご紹介いたします。
『こんぴら狗』(くもん出版)
著者:今井恭子・作 いぬんこ・画
342ページ
本体価格:1,500円
ISBN978-4-7743-2707-5
~~目次~~~~~~~~~~~~~~~~
『こんぴら狗』概要あらすじ
『こんぴら狗』読書感想文書き方【2作】
課題図書ほかの3冊
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『こんぴら狗』概要あらすじ
物語の王道、それは・・・
来て戻る
・・この2つ。
「桃太郎」も
「浦島太郎」も
かぐや姫の「竹取物語」も
宇宙戦艦ヤマトも
スターウォーズも
ドラゴンボールも
これらすべて「行って戻ってくる」か「来て戻る」お話。
どうして人間は、そのような「行って戻る」「来て戻る」の話に興味をそそられるのか?
それは・・・
そこに「人生の縮図」を見ることのできるからです。
つまりは
「この世に生まれ」→「あの世に帰る」
「あの世から来て」→「この世から帰る」
この「人生」という時間の中で経験するさまざまな出来事を、一つの物語の中で学べる内容だから興味づけられるのです。
人生で遭遇する「試練」や「災難」「不幸」のパターン、また「人としてあるべき姿」や「人として大切なこととは何か」を、このような物語は教えてくれるからです。
言い換えれば、物語は「人生の疑似体験」の提供であり、また「人生の羅針盤」のような存在であるため読み継がれているのです。そのため「世界中の神話」の内容も同じような構成になっています。
さて、今回紹介するこの『こんぴら狗』は、その「行って戻ってくる」の物語の王道を、人間が感情移入しやすい「犬」という動物を主人公に、しかも、日本人が興味をしめすであろう「実際にあった江戸時代の風習」を基に描かれています。
「感情移入しやすい犬」+
「江戸時代に実際に会った風習」+
「心の時代を反映する信仰との絡み」
これら、当たるべくして当たったと思える要素をふんだんに盛り込んでいるため、名誉ともいえる読書感想文の課題図書に選定される運びとなったのでしょう!(お見事)
私が思うに、学年を超えて2018年の課題図書の中で最も面白い作品でした。2018年最高の課題図書にして名作!
作者の今井恭子先生は、制作に3年をかけたといいますが、その努力が見事に作品のレベルに反映されております。小学校高学年向けの課題図書ですが、大人も十分楽しめる内容です。先生にはビール券ぐらいだったら贈ってあげたい気分です。(^∇^)″
是非、3年ぐらいたった後は、角川あたりから「文庫版」を出してもらいたいと思います。ドラマ化もしてもらいたいですが、時代劇になるので予算が・・(-_\)
また、香川県の街おこしにも一役立ちそうな内容ですので、英訳版も出版していただき、外国人に取材させた内容をYouTubeで紹介させ「海外からの観光客」を増やすためにも活用していただきたい・・。そのように思える内容でした。
犬が一匹で、江戸から讃岐(さぬき=四国の香川県)の金毘羅(こんぴら)様にお参りに!?
江戸時代、伊勢参りや金毘羅参りは庶民の憧れ。でも自分はなかなか旅には出られないから、代わりに飼っている犬にお参りに行かせる。そんな、今では信じられないユニークな風習がありました。中でも讃岐の金毘羅まで、代理でお参りにいく犬のことを「こんぴら狗」といいます。本作はその「こんぴら狗」を題材に描かれました。
主人公は雑種犬のムツキ。捨てられ、弱りはてていたところを拾ってくれたのが、飼い主の弥生。でも、今度は弥生が病気でふせってしまいます。弥生の治癒祈願のため、ムツキは「こんぴら狗」として、江戸から金毘羅参りに向かうことになります。まずは京都まで、ムツキをかわいがってくれている瀬戸物問屋のご隠居と一緒に向かいますが…。
波乱に満ちたムツキの旅と、道中での出会いと別れ。ムツキの旅を応援し、ムツキの金毘羅参りにささやかな祈りを託す人々の温かさを描き出します。
作者の今井恭子先生が解説・・
用紙・字数:小学校高学年の部(5、6年生)本文 本文1,200字以内
趣 旨:
より深く読書し、読書の感動を文章に表現することをとおして、豊かな人間性や考える力を育む。更に、自分の考えを正しい日本語で表現する力を養う。
原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰に規定はありません。
※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。
『こんぴら狗』読書感想文【例文2作】
読書感想文の「構成」や「話の広げ方」「表現方法」などは下記のページに書かれています。中高生向けですが、参考になる点も多いはずです。
読書感想文の書き方のコツ図解
(テンプレート付き)
『こんぴら狗』(読書感想文の書き方の例文①)
『こんぴら狗』を読んで
読書感想文の課題図書を見た時、思わず真っ先に手を伸ばしたのがこの『こんぴら狗』でした。それは、犬という私の大好きな動物が表紙を飾っていたからです。でも、私はこの本のタイトルになっている「こんぴら狗」という言葉を聞いたことがありませんでした。
本で描かれている江戸時代は、四国の讃岐にある金毘羅大権現にお参りに行くことが庶民の夢でした。しかし今とは違い、交通が整っていない時代だったため、江戸から金毘羅参りに行くことはなかなかできることではありませんでした。
そこで、当時の人は、旅に慣れた人に代わってもらい金毘羅参りに行ってもらうことをしていたそうですが、代わりの人でなく、なんと、飼い犬に代わりに行かせることもあったのだそうです。「こんぴら狗」という物語は、病気になった主人「弥生」のために、飼い犬のムツキが金毘羅参りにいくお話です。
私がいちばん心に残った場面は、主人公の犬のムツキが目的地である金毘羅大権現にたどり着いた場面です。途中の船着き場から一緒に旅をしてきた三人が、ムツキのお祈りと、ムツキが無事でありますようにと祈るところに優しさを感じ心を打たれたのです。犬のムツキが、本当に江戸から、飼い主の病祈願のためにやってきたのかと感動した三人は、ムツキの帰途の無事を金毘羅大権現に祈っていましたが、その場面もとても嬉しく、本を読んでいる私の気持と同じ心境なのだと感激しました。
私も以前、飼っていた猫が死にそうになった時、必死で手を合わせ祈りましたが残念なことに16歳の猫だったため、寿命が来たようで祈った甲斐もなく死んでしまいました。でも、目の前にいるのではなく、どこを歩いているのかも分からない飼い犬を無事に戻ってくるよう毎日願る飼い主の弥生は、私以上に辛い気持ちの中で祈り続けていたのではないかと想像させられました。
また、江戸時代は今より貧しい生活をしていたと思うのですが、江戸時代の人たちも、金毘羅参りをしている犬を見ると、今の人間と同じように、餌をくれたり、水をくれたり、応援してくれていた様子が描かれていて、時代に関係ない人間の温かさを知れて嬉しく思いました。
江戸時代は、今と違い病気になったら病院で治してもらうこともできず、また、今のようによく効く薬をもなく、たくさんの人が亡くなっていったはずです。そのため「こんぴら狗」のような風習もできたのでしょう。
ムツキの苦労が通じたのか、飼い主の弥生の病は無事に治りましたが、これは偶然といえば偶然なのかもしれません。でも「人を思う気持ち」や「弱い相手に親切に接する気持ち」は何よりも大切なものだと思います。
それは、そのような気持ちが世の中を進歩させ改善してきた理由だと思うからです。私はこの本を読んで昔から日本人が大切にしてきた「他人を思う気持ち」や「弱い相手に親切に接する気持ち」をこれからも大切にしたいと思いました。(1192文字)
『こんぴら狗』(読書感想文の書き方の例文②)
『こんぴら狗』を読んで
この本は、江戸時代の日本を舞台に、当時実際にあった、自分の代わりに愛犬を現在の四国香川にある「金毘羅大社」にお参りに行かせるという「こんぴら狗」の風習を題材にしたものである。
この本の中で、私が一番考えさせられたところは、飼い主の弥生がムツキをこんぴら狗に出すことを食事が喉を通らないほど悔やんだ場面である。そもそもどうして、自分の愛犬を危険の伴う「こんぴら狗」として代参にだすことになったかであるが、弥生は平左衛門の「恐らく、戻らなかった犬はたくさんいる。ムツキのような甘やかされて育った犬には到底無理」との言葉にムツキをバカにされた気がして勢いで代参に出すことになった、というのが原因だった。
つまり、自分の愛犬がバカにされた気がして「勢いで」こんぴら狗に出すことを決めてしまったのだ。私はこの部分を読んで「弥生はなんてバカな判断をしてしまったのか」と頭にきたのだ。犬好きの私としては、弥生が後で食事が喉を通らないほど落ち込んで悔やんだ心境も十分わかるが、自業自得というか、私は「勢いで何かを言い返すことの危険」を十分なくらい勉強させられたのだ。この判断ミスは「痛恨の極み」であり読んでいてガッカリを通り越して頭にきてしまったのだ。
また、当時は人の死が今より身近なものであった点にも注目してしまった。まだ若い兄がなくなったことや、ご隠居が旅先で亡くなり、やる気のないお寺で葬られたことが、なぜか現実的な流れに思え、当時は家族が次々と亡くなっていくのが普通だったことを考えさせられてしまったのである。
その意味で、現代の科学の恩恵への感謝の念をこれまで以上に感じるようになった。科学が発達していない時代においては「すがる思い」の表し方を考えるしかなく、その表れの一つとして飼い犬を代わりに参拝させる危険な「こんぴら狗」の風習も生まれたのだから、科学の進歩は犬を危険な旅から救たことにもなる。
旅の途中、さまざまな人間の思いと裏腹に、ムツキは犬の特徴をそのまま持ち続けていた点も、私がムツキを応援したくなる理由だった。見知らぬ旅先でも猫と喧嘩してどこかに行ってしまう様子や、雷に驚いて駆け出すようすなどである。また旅を終えて帰ってきたムツキが、夢を見ながら足をビクつかせている様子も、犬好きにはたまらない可愛いらしさをだしていた。この置かれた環境や立場に関係なく、いつも「犬は犬のまま」というムツキの様子が私を応援したい気持ちにさせていたのだと思う。
本書の全体を通じ、私は日本人であることを、これまでよりも誇りに思えるようになった。それはこの物語を通じ、当時の日本人の優しさや真面目さ、動物との温かい関係など、現代人と同じものを感じ取れたからだ。それは、今という「点」のような存在として捉えていた日本人像を、「線」のように繋がりのある対象として捉え直すことができたためだと思う。(1185文字)
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物語を読んで「人生の疑似体験」をしよう