「変身」読書感想文の例文【5作品】

こちらでは、不条理小説の古典にして名作カフカ変身あらすじや、読書感想文を書く際に参考にしていただけそうな着眼点感想文の例をご紹介いたします。

おもに中学生高校生が、1200字1600字2000字(原稿用紙3枚、4枚、5枚)の読書感想文を書く際に、参考にしていただけそうな書き方の例をご紹介しております。

~~目次~~~~~~~~~~~~~~~
カフカの「変身」について
「変身」あらすじ
ここがポイント!着眼点の例
「変身」読書感想文の例【5作品】
書きやすい読書感想文の構成の例
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カフカの「変身」について&「あらすじ」

「変身」の内容が、約4分で分かる「あらすじ」動画!

「変身」についての深読み解説・・・実は「変身」は不条理ではない!
「変身」はカフカ自身の深い悩みの投影だった。この考察には納得させられてしまいます。スバらしい!

「変身」の全文は、ネット上で読むこともできます。
「変身」横書き版
 
 

ある朝目覚めると、ベッドの中の自分が一匹の巨大な毒虫に変わっていることに気がつく場面からこの物語は始まる。

しかし、主人公のグレゴールは自分がなぜ毒虫に変わってしまったのかということに疑問を抱いていない。何の前触れもなく得体の知れないものに変身したのに、あまりにも落ち着き払っている。むしろ家族のことや電車のことばかり考えており、思考は人間そのものである。

家計を支えるために仕事をしてきたグレーゴルであったが、毒虫になってしまったグレゴールに対する彼の家族の反応はひどいものであり、初めはドアのむこうで心配そうに声をかけてくれたり、泣いたりしていたのに、ドアを開けた瞬間彼らの態度は一変する。母親は放心し、父親はステッキで追い払おうとする。

兄思いの妹のグレーテは、最初はグレゴールが食べられる物を運んでくれたり部屋の掃除をしたりするが、後半ではほとんどそれらをすることはなくなる。そればかりか「この化けものから解放される努力をしなければならない」とまで言うようになる。

物語が進んでいくにつれ、彼の様子も変わってくる。腐った食べ物を好むようになり、壁や天井を這うようになり、すっかり虫のようになってしまう。段々と変わっていく様子は読んでいて苦しい。人間だったものが少しずつ違うものになっていくことに気味が悪くなる。

家計を支えていたグレゴールが虫になってしまったため、生活費を稼ぐ必要が生じた家族は皆、働きに出ることになる。それを不幸と感じた家族は、この不幸をグレゴールのせいにする。心を痛めたグレゴールは自分さえ死ねば解決するよう思うようになる。

死を願うグレゴールであったが、父が投げたリンゴにあたり大ケガをする。結局このケガががもとで死んでしまう。朝早く、お手伝いの女性が部屋に入り、グレゴールの死を確認したのだが、そのさい、彼の死をみて口笛を吹く。そして「こちらに来てごらんなさい。くたばっていますよ。あそこにほら、伸びていますよ」という。

死んだ虫となった息子を見て、母親は一言「死んだ」とつぶやく。父親は「これで神様に感謝できるってものだ」といい胸の前で十字を切る。

物語の最後、グレゴールが亡くなり、はじめての三人一緒の外出の場面では「家賃の安いもっと住みやすい家に引っ越ししたいね」「そろそろ娘にも適当なお婿さんを探してやらなければ・・・」などと考える家族であった。

 

     
    以下のような着眼点を参考に自身の考え方を述べてみるのはいかがでしょうか?

    グレゴールの虫への「変身」の意味や理由を推論し、自分の考えを述べるのもよいでしょう。(家族を支えるための外交販売員としての仕事の疲れの限界が「変身」という逃避的な現象としてあわれたのではないか・・など)

    また、虫への変身以外でも、ストーリーの中で発せられた、登場人物の言葉やアクションは、実社会の何かを象徴したものであように思えます。そのため、登場人物の言動を引き合いに出し、それを自分なりに実社会の何を象徴しているものであるかを解説してみるのもよいでしょう。

    グレゴールが虫に変身したことで、家族も別の人格に「変身」したのではないか?つまり、変身したのはグレゴールだけではなく、グレゴールの変身によって、家族も「変身」したのだ・・・という切り口で感想を展開するのもよいでしょう。

    グレゴールは、実は2度変身した・・という切り口で「見た目の変身」と「心の変身」の二段階があったことを指摘し、それぞれの理由を述べるのもよいでしょう。

    グレゴールは虫に変身してしまったが、そもそも人間と虫との違いとは、見た目以外ではどのような点であるか?・・その点について自説を述べ、グレゴールは見た目が虫に変身したが、虫とよんでよい存在なのか?などを考察してみるのもよいでしょう。

    カフカが徐々に虫のような行動をとるようになったのは家族が自分のことを虫扱いしはじめたためではないか?という理由付けをし「人は他人からどのような存在として見れれているかによって自らもその期待どおりの行動をしてしまう性質がある」という心理学的な「レッテル」の理論を引き合いにだし、そのことを寓話的に伝えようとした作品だったのではないか?という切り口で、始めは体だけが虫になったグレゴールだったが、虫という存在として意識されることで、心まで虫になったのだ・・・という「人間とレッテル」についての論理を展開するのもよいでしょう。

    人は外見によって判断されてしまいがち、ということを伝える作品ではなかったか?・・・という切り口で、もし虫ではなく、人から愛されるような「別の存在」に変身していたら?という仮定で感想文を展開するのもよいでしょう。もし、他人から親切にされたいのであれば、他人が親切にしてあげたくなるような人間として、こちらが振る舞う必要があるのだということを、この作品によって気づかされた・・という感想文もよいでしょう。

    不条理文学の古典といえる作品ですが、実は不条理ではないのではないか、という切り口で自説を述べるのもよいでしょう。(2つめの動画参照)

    この作品が書かれた当時の時代背景、社会の価値基準を調べ、現代はどのように変化していったか、など「この作品が書かれた時代と現代との対比」を柱に感想文を書くのもよいでしょう。

    虫に変身したグレゴールでしたが、虫になってはじめて「人間らしさ」とは何かを読者に伝えようとしたのではないか?・・という展開にし、人間らしく生きるとはどのようなことかについて、考えを述べてみるのもよいでしょう。

    著者のカフカの生い立ちや社会的立場とこの作品を書き上げた理由を推論し、時代を超えて共通する人間心理は何かについて感想文を書くのもよいでしょう。

    虫目線でストーリー展開する、カフカの斬新な手法は、日本でいえば、猫目線でストーリー展開した、夏目漱石の「吾輩は猫である」に通ずるものがあります。その共通点について論評したり、そのような手法の良さについて語るのもよいでしょう。

    ・・・これら中からいくつかを引き合いに出し「自分の考え」や「過去の思い出」などとからめて解説してみましょう。

 
学校などの教育機関が与える課題は「教育的成果」を期待してのものです。そのため、教育機関からの課題としての読書感想文を書くにあたっては「どのような学びを得ることができたか」を感じ取れる感想文にすることが大切です。

つまり、教育機関からの課題としての感想文は・・

感想文を書きなさい=どのような学びが得られたかを書きなさい

 
・・の意味だからです。そのような方向性(どのようなことが勉強になったか)を意識して、伝える内容や構成を考えてみましょう。

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「変身」読書感想文の例文

以下に5作品をご紹介いたします。文字数はまちまちですが「書き方」「着眼点」の参考にしていただければと思います。

便利な文字数カウンター

カフカの「変身」を読んで
(1919文字)

グレゴール、君は一人死んでいった。言葉もなく、静かにただ静かに。それも、愛する君の父親の投げたリンゴによって。僕は最初、君の短い一生を知った時、何か君が哀れで悲しい者のように思えてならなかった。

だが、君があの「虫」に変身したことの裏側の部分を、君自身の人生とからみ合わせて考えてみると、かえって君が普通の人間に比べて幸せであったのかもしれないとさえ思えてきた。それで今、その裏側のこと、変身した君のこと、それに僕自身のことも合わせて、少しずつ考えてみようと思うのだ。

まず最初、君があの「虫」に突如身を変じた「朝」ということについて考えてみよう。あの「朝」とは何の前ぶれもなしにやってきた、全くの偶然の一時というようなものだろうか。僕はそうではなく、君の外交販売員としての生活からの一転機の日が終局的に訪れた、というように思う。(その終局をおそらく君は予感していたであろうが・・・)変身する前の君には販売員としての生活に対して抱いていた多くの不満や不安があった。

つまり、君には身体の疲労以上に心の疲れが相当集積していたように僕には思われる。その疲れの中で随分君は考え苦しんでいたようだ。そしてそれが君自身の苦悩の限界にまで及んでいたのではないだろうか。そのことを君は痛感しながら、どうするすべも知らなかった、また知ろうとする余地もなかったのではないだろうか。そしてその限界の終りを告げる日が、あの朝となって訪れてきたのだと僕は思う。

次に君が変身したあの奇怪な「巨大な褐色の毒虫」、虫というものについて考えてみたい。「虫」とは一体何を意味しているのだろうか。人間の醜い部分の象徴とも思えるし、醜さの装いの内に潜む美しさとも思える。だが僕は今それを次のように考えてみたい。グレゴール、君は自分の人生というものに対して決して満足はしていなかった。

それでその満足していない自分、何か不安な自分というものを、ある安らかな所、たとえぱ君一人だけの唯一の世界、というような所に持っていくことを望んでいたのではなかったか。

そしてその世界が意外にもあの醜い「虫」であった、とそう僕は思う。「虫」に変身した君には、今までとは異なる新しく生まれ変わった生活上の特権があると僕は思うのだが、君の場合は皮肉なことに、そんな特権どころか家族からも、また周囲の誰からも拒まれ、疎外され、あげくの果ては、愛する君の父親の投げたリンゴによって死に至らされた。

本当に皮肉な寂しい結末だ。だが、それが変身した者に対して与えられる、社会からの贈り物であったのかもしれないのだ。あの君の身体深く食い込んだリンゴは、実はこの社会の至る所に潜み多くの人間(君もその一人だったのだが)を狙っている恐ろしい果実のように僕には思われる。

君は一人静かに死んでいった、死ぬことを望んでいたかどうかは僕には判らない。だが死にはしないが、君とよく似た苦しみを持った人間が現代のこの社会の中にも、数多く生きていると僕は思う。その「よく似た苦しみ」の中には、めいめいの人間が自分の人生に対する不安のほかに、人間をとりまく社会の虚構。からくりというものも含まれていると思う。(それはちょうど大きな歯車と無数の小さな歯車とのからみ合いに似ている。)

多くの人間がそのからくりの中で生きているわけだが、そのからくりの動きと人間の内側からの真実の動きが時としてくい違い、人間のそれの方が遅れ、また止まってしまうことがあるように思う。あたかも磨滅した小さい歯車のようにくい違い、止まってしまった人間が、君。グレゴールであったのだ。これは単に君だけのことではなく、現代に生きる我々にもいつ訪れるかもわからないものなのだが・・・。

そして君の苦しみというものは、現代に生きる人間にとって誰もが心から共感できる性質の危機感でもあると僕は思う。また、君のようにその危機が訪れた時、人間は大抵当惑し、自滅的な行為に傾くだろう。だが、案外近くにそれを乗り越える方法があるかもしれない。

たとえば同類の仲間を見い出し、その仲間と共に新しい力を育てていくことも一つの方法だろう。が、その仲間すらも現代という社会の中ではなかなか簡単には見い出しにくく、また結びつきにくいものなのだが・・・。

グレゴール、以上のようなことを、僕は君の変身をめぐって考えてみた。まちがいや考え足らずのとこらもあるかもしれない。だが。僕はこれからもずっと考え続けようと思っている。それが人間や社会の内側に潜む真実のあり方を知る上に、大切なことのように思えるからだ。そのあり方を探る記録として、いろいろなことを考えさせてくれた君、グレゴールにこの文を贈る・・・。
 

カフカの「変身」を読んで②
(1733文字)

ある朝、グレゴール・ザムザは自分が巨大な毒虫に変身しているのを発見する。そこからこの話は展開していく。

グレゴールが虫に変身してしまったときに一変した家族の態度。彼に向けられた憎しみと恐怖と好奇心とは、まるで罪人に対する態度のようではないか。彼らにとっては、グレゴールが虫に変身したこと、それ自体が彼の犯した罪であったのろう。

変身した彼は一人、人間世界から遮断された冷たい牢屋と化した自分の部屋で孤独な毎日を送る。彼は、虫に変身したという理由ゆえに、人間としての取り扱いを受ける権利か一切失ってしまった。だとしたら、人間とは一体何なのだろう?

変身してもグレゴールはグレゴールである。彼の思考力、彼の頭脳、彼の心には何の変化もない。容姿、ただそれだけが人間と動物とを区別する絶対的な唯一の基準なのだろうか?

私にとって人間とは「愛する心の存在」そのものだと信じている。美を愛すこと、人を愛すこと、物を愛すこと。よきものすべてを愛すこと。これは人間にだけ可能なのだと信じているからだ。これが人間と動物とを区別しているのである。

動物だって愛の心を持りているなら、人間と呼べるのではなかろうか。人間とは、愛の心を持つものすべてに与えられる名称なのではないか。そのような考えで生きてきた私であるが、私のこの思想は、この本を読んだことで、初めて敵対する考えに会った。この作品は頭から、私のこの思想を否定し、破壊し、考え方の一つにすぎないと笑われた気がした。強く反発しつつ、私は大きな物の冷たい迫力に圧倒され沈黙した。

みじめに変化していく境遇をグレゴールはまるで傍観者であるかのように冷たく正視する。私はそれに恐怖を抱いた。彼の目はそのまま作者カフカの現実に向けられた批判の瞳につながっているようである。

鋭いカッターで切りさかれるように、グレゴールの目を通して徹底的に残酷に、鋭くえぐられていく人間の醜いエゴ。それは妹の発した次のことばで決定的になった。

「これがお兄さんのグレゴールだなんていつまでも信じこんできたってことが本当はあたしたちの不幸だったんだわ。いったいどうしてこれがグレゴールだというの?もしこれがグレゴールだったら人間がこんなけだものと一緒に住んでいられないということくらい、とっくにわかったはずだわ。そして自分から出ていってしまったわ、きっと。」

愛する妹から放たれた冷たいこの言葉。強く自分自身の存在を否定して死んでいった悲しいグレゴールの魂よ、安らかに・・・。そのように言葉をかけてやりたい気がした場面であった。

この作品中最も大事なポイントは「巨大な褐色の虫」これは何の象徴だったのかという点である。それは偽りのない心かも知れない。人間である限り、人は自分の心を偽らなくては生きていけない。人生とは果てしなく続く偽りの積み重ねなのかも知れない。けれども、自分の心の中に知らぬまに蓄積している偽りに、どれだけの人が気づいているだろうか? 

グレゴールは自分の心を偽って暮らす生活に限界を感じた。そして真実に生きたいと願った。彼の虚偽の世界から逃避したいという執念が偽りのない心の化身である「褐色の虫」に変身させたのではないだろうか?

もう一つのポイントは、なぜグレゴールが絶望と屈辱にみちた生活にあれだけ耐えうることができたのかという点である。彼を真実として考えるとき、彼の家族すなわち人間は、彼を嫌悪しつつ、心の底で真実の存在を求めていたのだと思う。人間が真実を求めている限り。それは存在しているのではないだろうか。

そして妹によって否定されたとき、真実は消え去ったのではないか。人間は古代から真実というものの存在に疑問を感じ、それを信じ、その姿を究明しようと努力してきた。そこに進歩があり、現在の人間がある。いかにこの世界が偽りにみちていようと、人間がそれを求める限り、真実は存在する。

この小説の中の人間のように、偽りのために目がくらみ真実を否定してはならない。これはとかく真実を軽視しがちな現代人へ、冷ややかにつきつけられた警告書であると思う。だから無視してはならない。私たちはもう一度、純粋に真実を求める心を養わなくてはならない。そう思わされた一冊であった。
 

カフカの「変身」を読んで③

以下、完成次第、掲載いたします。


  

カフカの「変身」を読んで④

 

カフカの「変身」を読んで⑤

 

書きやすい読書感想文の構成(書き方の順序)の例

ここでは、どのジャンルでも書きやすい標準的な読書感想文の構成例をご紹介いたします。

①なぜこの本を選んだのか
②大まかな内容やあらすじを手短かに説明
③特に気になった箇所やフレーズを抜き出す(1)
 なぜ気になったのか最近の出来事や自身の思い出とからませて紹介
④特に気になった箇所やフレーズを抜き出す(2)
 なぜ気になったのか最近の出来事や自身の思い出とからませて紹介
⑤著者がこの本を通じ伝えたかったことを想像し考えを書く
(伝記の場合はその人のどの点が立派だったのか)
⑥この本を読む前と読んだ後とでどのような考え方の変化があったか
⑦この本によって発見したことや反省させられた点など「本からの学び」を書く

【最重要ページ】感想文を書くにあたっての「コツ」「構成」「話の広げ方」などの詳細は下記のページに掲載しています。

読書感想文の書き方のコツ
(テンプレートつき)

 

虫より人間の方が幸せな存在に思えるなら、
 それこそが人間の勝手な思い上がりかもしれない・・・

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