『車いす犬ラッキー』読書感想文の書き方【例文つき】
こちらでは、2018年の「青少年読書感想文全国コンクール」高校生の課題図書である『車いす犬ラッキー:捨てられた命と生きる』の「あらすじ」と「着眼点の例」「読書感想文の例文」をご紹介いたします。
車いす犬ラッキー:捨てられた命と生きる(毎日新聞出版)
256ページ
著者:小林照幸・著
本体価格:1,500円
ISBN978-4-620-32445-6
~~もくじ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『車いす犬ラッキー』あらすじ&着眼点の例
『車いす犬ラッキー』の読書感想文【例文】
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『車いす犬ラッキー』あらすじ&着眼点の例
登場する人や犬
島田須尚さん
徳之島で生まれの、元電気屋さん。闘牛の牛を飼ったり、闘牛大会の映像記録販売をしたり、島で初めてカラオケボックスを開いたり、焼肉屋や回転寿司屋を経営したりと様々な商売をしていました。焼肉屋を経営している時に捨てられた犬を世話したことから、犬と生活を共になる。
寅(とら)
須尚さんが初めて飼った捨て犬。
保健所で処分される寸前に須尚さんに拾われ、
天寿を全うすまで須尚さんに飼われていた。
ラッキー
この本の主役的な犬。
須尚さんが飼った2匹目の犬で、この犬も元々は捨てられた犬。
交通事故で下半身がマヒしてしまい車いすで生活。
以下は、この本の話の中心になる「須尚さんと犬との出会い」以降の「あらすじ」になります。
2000年、焼肉店のそばに捨て犬が現れます。捨て犬ですが、情の厚い須尚さんは放っておけません。情が移った須尚さんは、保健所で処分される寸前の捨て犬を助けます。保健所の職員には「今から15年以上、自分は飼育できると自信を持って言えますか?」の問いにも「看取るまで飼います。」と力強く即答し、飼うことになります。
2012年末に須尚さんは、幼なじみの友達の経営する牛小屋を訪れます。そこで新たな捨て犬と出会いました。まだ赤ん坊でしたが、須尚さんは妻と相談し、ラッキーと名付けて大切に育てます。
2013年11月、大切に育てていたラッキーが交通事故にあってしまいます。リードを付けていないために事故に遭い背骨を骨折してしまったのです。出血もなく、体の腫れも見当たりません。血も吐かず、吠えもしませんが、ラッキーは下半身を動かすことができませんでした。しかし、徳之島には牛を扱う獣医はいても、犬猫を専門に扱う獣医はいません。
救っても、ケアしながら15年以上世話できるかも考え、保健所で処分する可能性も示唆されますが、須尚さんはラッキーが生きる道を探ります。須尚さんは、沖縄の獣医さんにラッキーを診てもらうことを決意し、ラッキーを船便で沖縄に送ります。沖縄で治療を受けたラッキーは下半身は不自由ながらも元気を取り戻して、徳之島に戻ります。
ラッキーは車いす犬として充実した生活を送っています。そんな須尚さんがラッキーが車いす犬として数年たってからは自身の健康問題も出てくる。だが逆に「ラッキーを看取るまでは死ねない」と生きる意味を見出していく。ラッキーがいることで、須尚さんにも生きる目的ができ、元気に日々を過ごしています。
【名場面】
「ラッキーは家族の一員です。どんなことでもします」・・30万円の費用と、術後に改善しない場合もあることを伝え、「介護状態になった場合も10年以上面倒を見る覚悟があるか」と獣医が島田さんに質問を投げかけます。その際、獣医さんへの島田さんの返事
ラッキーが車いすを初めて装着する場面・・島田夫妻の足元にじゃれついて、走ることができる喜びを一生懸命伝えようとするラッキーの姿に心を打たれます。
島田さんが胃がんになり、術後にラッキーがお見舞いに来る場面・・自宅に帰ってゆくラッキーの後ろ姿に、島田さんは「手術に耐え、ラッキーは頑張ってきた。自分もがんばらねば」と自分を励まし入院生活を過ごすことができたと島田さん。
以下の切り口を柱にした感想文を書くのはいかがでしょうか?
寿命がくるまで飼うことの大変さと責任の認識ついて
ペットを飼う人が飼う前に自問自答すべきこと
ペットを飼うことで自分がこれからできなくなることの認識
ペットの安楽死について
人間にとって「つながり」を意識できることは生きる原動力の一つ
日本と海外のペットに対する考え方の違いについて
ペットショップについて思うこと
これからの人間とペットのありかたについて
伝え残すことの価値
『車いす犬ラッキー』の読書感想文【例文】
文字数については下記のとおりです。
高等学校の部 本文2,000字以内
※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。
『車いす犬ラッキー』を読んで
今年の高校生向け課題図書の3冊は、障害を抱えた少女を題材にした『わたしがいどんだ戦争1939』と、ホロコーストに収容された人を題材にした『いのちは贈りもの』そして、障害を抱えた犬を題材にした本書『車いす犬ラッキー』である。
3冊に共通するのは、どれも「かわいそう」という言葉が連想される点である。それだけ読書感想文コンクールの主催者は高校生に「かわいそう」を意識させたいのだろう。
実は私は、今年のこれらの課題図書の3冊すべて読んでみた。どれも学ぶ点がいくつも発見できた素晴らしい作品だったのだが、今回この『車いす犬ラッキー』を題材に感想文を書こうとしたのは、この本は、これからの私の人生の中で、もっとも現実的な問題として、発生しそうな「ペットとの生活」をテーマを扱っていたものだからだ。
物語は、さまざまなビジネスを経験した島田さんが、事故で障害を負った犬と、その犬が亡くなるまで一緒に生きることを決意し、後ろ足の障害をカバーするために車イスを付けることとなったその犬と、明るく生活している様子を伝えるのもであった。
この本の中で、最も印象深かった部分は。主人公ともいえる島田さんが、初めて保健所から犬を引き取る際、保健所の人から投げ掛けられた「問いかけ」だった。その問いかけとは「今から15年以上、自分は飼育できると自信を持って言えますか?」というものだった。
私の叔母も40代の頃、衝動的にオオムを飼いはじめ、途中でやむなく手放したことを語っていたのだが、それは「オオムの寿命が長いものでは50年以上になる」という事実を知らずに飼い始めたことが原因なのだそうだ。
もし、叔母がオウムを飼う前に、後何年ぐらい世話をする必要があるのかを知っていれば、はじめからオウムは飼わなかったそうだ。つまり、そのような「知識」もなしに動物を飼い始めることは、その動物を不幸にするというわけである。言い方を変えれば、単純な知識があれば、不幸な動物をうませないこともできるということだ。
ペットを飼う前にはまず、その動物を看取るまでしっかり世話をするための「覚悟」を持たなければならないのだが、保健所の人からの質問は、さすがプロからの問いかけだなと、つくづく納得させられてしまったのだ。
読者の中にはこの本によってはじめてペットを飼う際の「知識」や「覚悟」を知った人もいるはずである。その意味で、この本の存在意義は大きいと思う。この本に出会えていなかったなら、ひょっとして私の叔母のような過ちを犯した人もいるかもしれないからだ。
また、本の中では、須尚さんがラッキーが車いす犬として数年たってからは自身の健康問題も出てくる。だが、須尚さんは逆に「ラッキーを看取るまでは死ねない」と、そこに生きる意味を見出していく。
アメリカで100ドル札の肖像にもなっているベンジャミン・フランクリンの名言に「他人に善を尽くすとき、人は自己に最善をつくしているのだ」という言葉がある。須尚さんにとって、ラッキーへ愛情をかけることは、この名言の内容と同じように、須尚さんにこそ救いの影響を与えているのだろう。
人間は、自分の行為が「反映されている」「影響している」「つながっている」と自覚できたとき、そこに「安心」や「充実感」といった感情がうまれるものだ。メールやTwitterで、相手からの反応がないと不安でたまらないという人も多いようだが、これも同じような心理だ。
本書を読んで、違和感を感じたところを1点あげれば、島田さんが焼き肉店という「牛の肉」を提供する仕事をしていた点である。この点について島田さんを非難するつもりはないが、なんというか「牛は食べても犬は救う」という人間の生き物に対する不平等さのようなものを感じてしまったのだ。おそらくこの「食肉を得るために動物を殺す文化」をなんとかすことが今世紀の人類に課せられた課題なのだと思わされたのだ。
この夏、偶然にもすべて「かわいそう」と思えてしまう3冊の課題図書を読んだことにより、私はある発見をすることになった。それは、どの本も書き残してくれた著者がいなければ、各々の本で知ることになった知識に出会えなかったということである。また、それらの本との出会いがなければ、心の内側から込み上げてきた感情もなかったわけだ。
「かわいそう」と思う気持ちや「他の動物に愛情を注ぐこと」も人間らしさの一つかもしれないが、何か自分が重要だと思ったことを伝え残すのも人間らしいことのはずである。考えてみれば、遺伝以外の方法で、世代を超えて何かを伝え残すことのできる生き物は人間だけだ。伝達するための技術が整っている今日であるが、私もこれからは大切と思うことはできるだけ伝え残すようにしたいと思う。そのようなことを気づかせてくれた、この夏の読書経験だった。(1968文字)
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