「中村哲物語」読書感想文の書き方【例文つき】

2023年の課題図書対策!

こちらでは「第69回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校「高学年」の部(5、6年生用)
『中村哲物語』の「あらすじ(内容)」や「着眼点のポイント」、そして「感想文の書き方の例文」などをご紹介いたします。

※おもに、小学生が1200字で読書感想文を書くための「書き方を教える大人むけの内容」になります。


松島恵利子 著 汐文社 1,760円 (税込み)
180ページ


 

~~目次~~~~~~~~~~~~~~~
「中村哲物語」あらすじ
ここがポイント!着眼点の例
読書感想文の例【例文】
他の課題図書&過去の入賞作品

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「中村哲物語」あらすじ

「中村哲物語」は、医者でありながらアフガニスタンの灌漑施設を作り、困難な状況の中でも「戦わない」ことを貫き通した中村哲氏の伝記です。彼の生き方は、幼少期から見続けてきた祖母の優しさや、昆虫博士への憧れ、教会で学んだ信頼の大切さなどによって形成されました。彼の人生の選択は、目には目を、歯には歯をという無残な日常に対する回答でした。

中村氏は自らの意志で医学部を選び、精神科医となった後、登山隊との海外旅行中に見た困窮した人々の姿に衝撃を受けます。その結果、自らパキスタンのペシャワールの病院で働き、ハンセン病患者の治療に尽力しました。また、その活動を支える「ペシャワールの会」も発足しました。

さらに、哲先生は近隣国アフガニスタンの苦境を知り、子どもたちが飢餓や水不足で命を落とす状況に直面します。彼はその現状を国内外に伝えるため、自身の命を賭けて食糧配給を行いました。そして、100人の医者よりも1本の用水路が必要だとの思いから、用水路の建設に挑みます。

哲先生は専門的な知識も経験もない土木工学に身を投じ、彼の故郷福岡の筑後川をモデルに用水路を建設しました。その成果は地元の人々に喜ばれ、彼らの生活は大きく改善しました。その後も彼はモスクや学校などを建設し、アフガニスタンの人々とともに平和を築いていきました。

しかし、2019年に彼は作業現場へ向かう途中で命を落としました。しかし彼の遺志は現地の人々に引き継がれ、彼の物語は我々にとって、他国の文化への尊重や気候変動の脅威への対処方法を再認識する契機となるでしょう。この物語は小学生から大人までが学べる普遍的なテーマを扱っています。特に、「小さな一つ一つが、何でもないようなことが人間の真心。それをじっと守ることが大事なんだ」という彼の言葉は、私たち自身の生き方に影響を与えるでしょう。
  

「中村哲物語」着眼点の例


 
数ある本の中から、どうしてこの本を選んだのかを説明するところから書き出すのも良いでしょう。
感想文の書き出し「入賞21パターン」

役割の枠を超える行動について

中村先生は医者であるという役割を超えて、人々の生活全体を改善するために用水路の建設に尽力しました。その思考や行動は役割の枠にとらわれず、より広い視野で問題を解決しようとする姿勢を示しています。この点を述べる感想文もよいでしょう。

他人への影響と影響力について

中村先生が医者になったきっかけは祖母の影響であったことから、我々が他人にどれだけ影響を与えるか、また自身が他人からどれだけ影響を受けるかということを考えさせられたことを述べる。

真心と配慮について

中村先生の言葉「小さな一つ一つが、何でもないようなことが人間の真心。それをじっと守ることが大事なんだ」からは、些細な行動や配慮が人間の真心を形成し、それが大切だという教訓を学んだことを述べる。

小さな行動の価値について

中村先生は「小さな行動一つ一つが他人を幸せにする力がある」という価値観を示しています。大きな事業を始めることは難しいかもしれませんが、小さな配慮や思いやりから始めることは誰にでも可能です。そのことに気づいたとする感想文もよいでしょう。

自己実現と信念について

「人は自分がやりたいと思うことをやり、自分が信じる道を進むべきだ」という中村先生の教えから、自己実現の大切さと信念を持つことの価値を学びます。それぞれが自身の道を選び、信じる道を進むことが重要だと示唆されています。そのことに気づいたとする感想文もよいでしょう。

この本を読む前と、読んだ後で「生き方」にどのような考え方の違いができたか。

「この本をきっかけにして、いろいろなことを本を読んでもっと勉強したいと思えるようになりました。」・・・という締めくくり方もよいでしょう。読書の習慣を身に着けるキッカケになったとする感想文は「教育的効果の表れを感じさせる感想文」です。

この本を読んで、物語や経験などを「伝えることの価値」「書き残すことの価値」について気づけたことを発表する感想文も素晴らしい着眼です。そして「自分も大人になったら物語や経験を本に書き残せるような大人になりたいなと思いました。」とするまとめ方も良いでしょう。

・・・これらの中からいくつかを取り上げ「思い出」や「最近の出来事」などと絡めて感想文を書いてみましょう。

 
学校などの教育機関が与える課題は「教育的成果」を期待してのものです。そのため、教育機関からの課題としての読書感想文を書くにあたっては「どのような学びを得ることができたか」を感じ取れる感想文にすることが大切です。
 

「中村哲物語」読書感想文の例【例文】

以下に、読書感想文の例文をご紹介いたします。文字数はまちまちですが「書き方」「着眼点」の参考にしていただければと思います。小学生ではまだ習っていない漢字も含まれているため、その部分も平仮名に直したあとの文字数で、規定の文字数に合わせてください。

便利な文字数カウンター

「中村哲物語」を読んで①

※以下の感想文は、動画の中で紹介されていた感想文をテキスト化したものです。

「お医者さんなのに、大地をうるおす?」僕の頭の中に、はてなマークがうかんだ。表紙を開くと、アフガニスタンの人々に囲まれ哲先生と、一面砂漠だったのに緑がおいしげったスランプール地区の写真が目に飛び込んできた。哲先生は、医者でありながら、干ばつの進むアフガニスタンに用水路を作り、作物を育てることに成功した人だった。

読み始めてすぐ、しょうげきが走った。哲先生は、もうこの世にはいない。2019年、いつものように仕事に行く途中、何者かに銃で打たれて亡くなった。

「人は亡くなってから偉大さがわかる」と聞いたことがあった。きっと哲先生の功績も、多くの人に影響を与えたにちがいない。

幼い頃から昆虫が大好きだった先生は、精神科の医者になって、登山隊の医師として海外へ行くことになる。この時に訪れた場所が、モンシロチョウの生まれた地であるヒンドゥークシュ山脈。そこで人々の生活を目の当たりにして、帰国後もパキスタンやアフガニスタンへ行くチャンスをうかがっていた。

現地での問題は大きく三つだった。一つ目は病気。ハンセン病や赤痢など、衛生面が悪いことで小さな子どもが次々と亡くなっていく。二つ目は干ばつ。雨がふらないため、作物が育たず、安全な飲み水も確保できない。三つ目は戦争。テロリストへの報復攻撃が続き、巻き込まれて命を落とす可能性もある。

哲先生は、どうして危険な場所で、人の命を救おうとしたのだろうか。そんな場所に行くのは怖い。何が哲先生を動かしたんだろうと考えた。僕は、三十ページに書かれていた「おばあちゃんの言葉」が印象的だった。哲先生のおばあちゃんは、石炭を海外へ運ぶ「沖仲仕」をたくさん雇っている人だった。

沖仲仕の多くは朝鮮半島に故郷を持つ人で、「弱いものはすすんでかばうこと。決して職業で人を差別してはいけない。どんな小さな物の命も大切にしなくてはならない』という言葉が、ずっと哲先生の中で生きていた。

哲先生は、小さいころから、おばあちゃんが親切に人と関わってきた姿を見ていたと思う。おばあちゃんから、人や命への接し方を学んだのだろう。哲先生は、幼いころから人を大切にする土台ができ上がっていた。

さらに、哲先生のすごいところは、現地の人を動かしたことだ。水路づくりは、哲先生一人の力ではどうにもならない。人を思う気持ちがアフガニスタンの人を巻き込み、困難を乗り越え最後まで完成させたのだと思う。哲先生からは、自分の気持ちを表現する大切さを感じた。偉大な人は、自分の思いを持ち言葉や行動で周りに伝えることができる人だと思う。

哲先生は、もうこの世にはいない。生きていたら、本はできていないかもしれない。僕は、哲先生のように、はっきりと表現して、人を動かせる生き方をしたい。きっと、誰かのために役立つことにつながると思う。この本は、人を思う大切さと、自分のこれからの行動を考えるきっかけとなるすてきな本だった。
 

「中村哲物語」を読んで②
 
「中村哲物語」は、私の心を深く揺さぶる一冊でした。本書は医者である中村哲先生が、アフガニスタンで用水路を作ったという話を描いています。ただの伝記ではなく、先生の言葉や行動から得られる教訓が多く含まれており、私にとっては大切な教科書のような存在となりました。

本書を読み進めて一番驚いたのは、医者である中村先生がなぜ用水路を作るために奔走したのか、という疑問でした。医者というと病気を治す役割を想像しますが、先生はそれだけではなかったのです。病気を治すだけでなく、人々の生活を改善するために何が必要かを考え、それを具体的に行動に移したのです。このことから、先生の役割が精神科医から土木工学者へと変化した理由が理解できました。この発見は私にとって新しく、医者の仕事とはそういうものも含まれているのだということを初めて認識しました。

また、先生が医者になるきっかけも、私にとって非常に共感できました。昆虫学者になりたいと思っていた中村先生が、祖母の影響で医者の道を選んだというエピソードは、祖母の影響力がどれほど強いかを示しています。私自身も祖母から影響を受けた経験があるため、先生の心情に深く共感しました。

そして、特に心に残ったのが「小さな一つ一つが、何でもないようなことが人間の真心。それをじっと守ることが大事なんだ」という先生の言葉でした。これは、どんな些細なことでも大切に扱うということの大切さを示しています。これこそが、真の優しさや愛情だと考えました。私も、友人や家族に対する小さな配慮が大切だと感じました。

この本を読んで、私は自分自身が何をすべきかを改めて考えるようになりました。小さな行動一つ一つが他人を幸せにする力があると気づきました。それは、クラスメイトに笑顔を向けることや、援助が必要な人を助けることなど、ささやかなことかもしれません。中村先生のような大きな事業を成し遂げることは難しいですが、小さなことから始めることはできると思いました。

最後に、この物語は、私にとって非常に重要な教えを与えてくれました。それは、「人は何か大きなことをしなくても、小さなことでも他人を助けることができる」ということ、そして、「人は自分がやりたいと思うことをやり、自分が信じる道を進むべきだ」ということです。

「中村哲物語」を読み終えて、私は自分の生き方について再考する機会を得ました。そして、これからどのように生きていくべきかを学ぶことができました。そのため、この本は私にとって価値ある教科書と言えます。そして、これからも私の心の中にずっと残ることでしょう。
 

「中村哲物語」を読んで③

本を読み終えた瞬間「人はこれほどまで強くなれるのか」と感動させられた。哲先生の無私の精神と勇気、そして彼の達成した奇跡に、感動せずにはいられませんでした。また前半を読んでいる際「医者なのに、大地を潤すなんて、どういうことだろう?」と疑問がわいたのだが、その疑問も物語を追うほどに解けていき、代わりに尊敬と感謝の気持ちでいっぱいになりました。

彼の生涯は、命の尊さを教え、人間の可能性を示し、自己犠牲の美しさを描いています。しかし、その全てが彼の幼少期に根差していたことに驚きました。彼のおばあちゃんから受け継いだ、「どんな小さな命も大切にする」という教えが、彼の人生観を形成したのです。

彼の物語が進むにつれ、彼が直面した問題の深刻さを理解することができました。現地では、病気、飢餓、戦争といった大きな問題が山積みでした。それでも彼は前向きに取り組み、現地の人々と協力して用水路を作り上げ、その結果、人々の生活は少しずつ改善していきました。

これらの経験を通じて彼が示した言葉、『小さな一つ一つが、何でもないようなことが人間の真心。それをじっと守ることが大事なんだ』は、私の心に深く響きました。大切なのは大きな成果ではなく、小さな日常の中にこそ真心が宿ると教えてくれました。

彼の物語を読み進めるうちに、自分自身も小さなことでも大切にし、一つ一つの行動を通して人を思いやる心を持つことを心掛けたいと感じました。哲先生のように思いやりのある行動を通じて、周りの人々に影響を与えることができればと思います。

哲先生の生涯は、犠牲と奇跡の物語でしたが、それは彼一人の力ではなく、周囲の人々との絆と助けがあったからこそ可能でした。その事実は、私たち一人一人がどんな小さな力でも集まれば大きな力となり、世界を変えることができると教えてくれます。

この物語を通じて、自分自身の生き方や考え方、そして行動について深く考えるきっかけを得ることができました。小さな一歩が大きな変化を生む。その事実を忘れずに、これからも自分の生活を進めていきたいと思います。この本は、そのような考え方を形成するのに大いに役立つ一冊でした。
 

 

「社会」に目覚めた人間の尊さ
 

用紙・字数のルール その他

原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰に規定はありません。
文字数については下記のとおりです。

小学校低学年の部(1、2年生) 本文 800字以内
小学校中学年の部(3、4年生) 本文1,200字以内
小学校高学年の部(5、6年生) 本文1,200字以内
中学校の部 本文2,000字以内
高等学校の部 本文2,000字以内

※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

応募のルールについての詳細は主催者ページで発表されます。
「青少年読書感想文全国コンクール応募要項」
 

他の課題図書&過去の入賞作品

2023年の小学校高学年(5,6年生)用の課題図書は次の4冊です。
クリックすると解説ページが開きます。

過去の課題図書の紹介

過去の課題図書も「自由読書」のジャンルとして感想文を提出することができます。そのため、どの本を読もうか迷っている場合「書き方のアドバイス」や「例文」が存在する過去の課題図書の中から本を探してみるのも得策です。

2022課題図書

2021課題図書

2020課題図書
 
2019課題図書

2018課題図書

2017課題図書

2016課題図書
 

また、長年読み継がれている「名作」の中から感想文を書く本を選ぶのもよいでしょう。こちらも書き方のアドバイスや例文つきです。
名作おすすめ本一覧
 
書き方の参考用に、過去の入賞作品の紹介ページも作りましたのでご活用ください。

【最重要ページ】感想文を書くにあたっての「コツ」「構成」「話の広げ方」などの詳細は下記のページに掲載しています。中高生向けですが、小学生に書き方を教えるご家族にも参考になる内容ですので、ぜひ一読ください。(気になる審査基準も掲載!)

読書感想文の書き方のコツ
(テンプレートつき)

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