『5番レーン』読書感想文の書き方【例文つき】

2023年の課題図書対策!

こちらでは「第69回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校「高学年」の部(5、6年生用)
『5番レーン』の「あらすじ(概要)」や「着眼点のポイント」、そして「感想文の書き方の例文」などをご紹介いたします。

※おもに、小学生が1200字で読書感想文を書くための内容になります。

『5番レーン』

ウン・ソホル 作 ノ・インギョン 絵 すんみ 訳 鈴木出版 1,760円 (税込み)
254ページ
 

 

~~目次~~~~~~~~~~~~~~~
「5番レーン」あらすじ(概要)
ここがポイント!着眼点の例
読書感想文の例【例文】
他の課題図書&過去の入賞作品

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「5番レーン」あらすじ(概要)

本書は、韓国で第21回文学トンネ児童文学賞大賞を受賞した作品です。

『5番レーン』は、競泳を舞台にした13歳の少女カン・ナルの物語です。彼女は漢江小学校水泳部のエースとして、50メートル自由形で25秒のタイムを目指し、日々欠かさず訓練を重ねています。しかし、ナルの道は決して平坦ではありません。彼女は4番レーンのブルン小学校のエース、キム・チョヒとの競泳で連続して敗北を味わいます。そして、自身の短い腕とチョヒの水着が反則ではないかと勘違いし、負けを受け入れることから逃げていました。

その時、新たな風がナルの生活に吹き込みます。転校生のチョン・テヤンが水泳部に入部し、彼の純粋な水泳への熱意とともに、ナルの中にも新たな感情が芽生え始めます。彼らは急速に接近し、水泳が結びつけた二人は恋愛関係に発展します。しかし、ナルの心の中には新たな悩みが生まれていました。彼女はついチョヒの水着を盗んでしまうのです。

この事件を通じて、ナルは自分自身と向き合うこと、そして自分の行動と結果に対する責任を学びます。結果に一喜一憂するのではなく、自分の両腕と両足で結果を作り出すことが大切であると、彼女は徐々に理解していきます。そして、過ちを犯した後も、自身の行動を正々堂々と受け入れる勇気を持つようになります。

この物語は、ナルの成長と変化、そして彼女の周囲に存在する家族や友人、コーチたちの影響を描きつつ、友情や恋愛、そして大人の温かな眼差しや言葉といった要素を通じて、自己と向き合うことの難しさとその重要性を繊細かつ現実的に描写します。ナルの過ちとその受け入れ方、そしてその後の前向きな挑戦を通じて、読者は自己と向き合うことの難しさと美しさを体験することができます。

※感想文の例文を読むことで内容がより分かりやすくなります。

【登場人物
カン・ナル:主人公。漢江小学校水泳部のエース。
キム・チョヒ:他校の水泳部のエース。ナルのライバル。

カン・ボドゥル:ナルの姉。競泳をやめ、飛込をやっている。
チ・スンナム:水泳部の部長。ナルの幼なじみ。
チョン・テヤン:転校生。水泳部入部を希望。

ウ・ジミン:ナルやテヤンのクラスメイト。
イ・ジフン:ナルの映画館デートを目撃した生徒。

キム・サラン:水泳部。
セチャン:水泳部。
シン・ドンヒ:水泳部。

【最後の部分 結末(ネタばれ注意)】
本番当日、決勝前にコーチに「決勝を棄権したいです」「水着アタシが盗んだんです」と告白した。だがそれに抗議してきたのがキム・チョヒだった。「水着を盗んでまで勝ちたいわけじゃない。自分の力で勝ちたい!って(手紙に書いてあった)アタシも自分の力でアンタに勝ちたい。お守りなんかいらない!逃げて(棄権して)どうするの?」「アタシがアンタに勝ったらアンタを許してあげる」と・・・チョヒも自分の力でアタシに勝ちたいんだ。その気づきと同時に闘志がわいてきた・・・出るしかない。真剣に挑むことが自分も含めたすべての人への礼儀だ。決勝の4番5番レーンを2人は同時に飛んだ。キム・チョヒが1位、ナルは自己ベストで2位。「どう負けたかが大事な意味を持つ試合」になった。表彰台でチョヒは「気づいたんだよね、お守りより強いものがあるって…アタシだよ」とはじける笑顔で表彰台に上がった。ナルは憎らしそうに、でも笑いながらにらみつけた。プールはナルの居場所。大事なのは自分で結果を作る事。そうすれば結果の良し悪しも受け入れることができる。今度はアタシがいちばんでタッチする。
 

「5番レーン」着眼点の例


 
数ある本の中から、どうしてこの本を選んだのかを説明するところから書き出すのも良いでしょう。

ライバルのチョヒからの言葉にナルは、触発されたり、勇気づけられたり、さまざまな影響を受けましたが、そのような「他人からの言葉」の影響力をこの本によって知ることができたとする感想文もよいでしょう。そして「友人の価値」「他人からの言葉」などについて触れ、友人や周囲の人への自分の接し方としての「あるべき姿」について考えさせられた・・とつなげる感想文もよいでしょう。

この物語を通じて気づいた「スポーツの価値」について自分の経験と絡めて感想文にまとめてみるのもよいでしょう。「もし自分が今やっているスポーツをやっていなかったら、今の自分は・・・」というような「やっていなかった自分」と対比させた感想文もよいでしょう。

継続することの意義や、継続する中で得られるもの、継続することで気づける他人の存在価値などを「挫折の意味」と絡めて、自分の考えを述べる感想文もよいでしょう。

「この本の内容をお父さんに話すと、お父さんは・・・」というように、家族に本の内容を伝えた際のエピソードを加える感想文もよいでしょう。家族の意見を加えることで、高度で意外性のある感想文に進展させることができます。

例)本の内容をお父さんに教えると、お父さんは僕に「その人が何を恐れ、何を不安に思い、何に対して怒りを感じるかで、その人の価値が計れるものなんだ。それらの対象が自分のプライドとか自分の存在価値の優劣とかにまつわるものの場合、まだ “社会性” を意識できていない幼稚な存在だってことが分かるんだ。」といいました。また、続けて「社会の進歩や世界の平和など、もっと大きなものに関心が向いた人間は、自分が他人と比較してどうかなんて気にならなくなるんだ。」といいました。僕はその話を聞いて、まったく今の自分はまだまだ子供なんだと思い知らされました。・・・など。

例)本の内容をお父さんに教えると、お父さんは「本を読むと、いろんな立場の人間の葛藤が疑似体験できるだろ。その疑似体験が、実際の生活の中で葛藤が生じた際に間違った判断をしないために役立つんだ。だから、この本のように、いろいろな立場の人の葛藤を物語を通して学んでおくことはすごく大事なんだ。」と教えてくれました。私はその父の言葉に、とても感銘を受け、これからはもっとたくさんの本を読んだりドラマを見るようにしたいと思うようになりました。・・・など。

この本を読む前と、読んだ後では「努力を続けることの意味」に対しての考えにどのような変化があったか。また「努力」と「努力を続けること」の違いについて、はじめて考えるようになった・・・というように「それ」と「それを継続すること」は別問題なのだ、ということにはじめて気づいたという切り口で感想文を書くのもよいでしょう。

ナルの姉の、カン・ボドゥルは、水泳をやめ飛び込みに転身しましたが、その部分を取り上げ「私はなぜか物語の本筋より、人間の興味の変化に考えさせられるものがありました」・・・のように、ほとんどの人が取り上げないマイナーな部分に焦点をあてて自分の経験などを絡めて掘り下げる感想文を書くのもよいでしょう。

この本をきっかけに自分も何かスポーツをしてみたいと思うようになったとう内容で「もし自分が〇〇をするようになったら・・・」と想像する感想文もよいでしょう。

水着を盗んだエピソードを読んで、思わず、有島武郎の「一房の葡萄」を思い出しました。どちらの本も悪いことをしてしまった後の、なんともいえない委縮した心の状態が想像でき、読んでいる自分も苦しくなってきました・・・というように別の本を引き合いに出し、共感できた様子を述べるのもよいでしょう。

試合の結果は、キム・チョヒが1位、ナルは自己ベストで2位。「どう負けたかが大事な意味を持つ試合」になった。・・・この部分に物語が凝縮されていますが、ここを引きあいにだし、これからの人生に必要な姿勢について考えを述べる感想文もよいでしょう。

本書には様々な登場人物が描かれていますが、他人とのふれあいや、他人からの言動がなかったなら、人生はどうなってしまうかを考えさせられました。・・・という切り口で感想文もまとめるのもよいでしょう。

「この本をきっかけにして、いろいろなことを本を読んでもっと勉強したいと思えるようになりました。」・・・という締めくくり方もよいでしょう。読書の習慣を身に着けるキッカケになったとする感想文は「教育的効果の表れを感じさせる感想文」です。

この本を読んで、物語や経験などを「伝えることの価値」「書き残すことの価値」について気づけたことを発表する感想文も素晴らしい着眼です。そして「自分も大人になったら物語や経験を本に書き残せるような大人になりたいなと思いました。」とするまとめ方も良いでしょう。

・・・これらの中からいくつかを取り上げ「思い出」や「最近の出来事」などと絡めて感想文を書いてみましょう。

「感想文の広げ方」については、下記のリンク先にまとめてあります。
「文字数が足らない場合の対策」と「話の広げ方」

 
学校などの教育機関が与える課題は「教育的成果」を期待してのものです。そのため、教育機関からの課題としての読書感想文を書くにあたっては「どのような学びを得ることができたか」を感じ取れる感想文にすることが大切です。
 

「5番レーン」読書感想文の例【例文】

以下に、読書感想文の例文をご紹介いたします。文字数はまちまちですが「書き方」「着眼点」の参考にしていただければと思います。小学生ではまだ習っていない漢字も含まれているため、その部分も平仮名に直したあとの文字数で、規定の文字数に合わせてください。

便利な文字数カウンター

「5番レーン」を読んで①

※以下は、動画の「モデル文」を横書きにしたものです。

書き出し(⇒書き出し入賞21パターン
負けたことの腹いせだったのだろうか。主人公のカン・ナルは、ライバル、キム・チョヒの水着を規定違反だと言い、その水着を盗んだ。盗んだことが明るみに出ると、自分は関係ないと白を切った。小学校最後の大会を前に、転校生のテヤンとデートをして付き合うことになる。負けを受け入れられないカン・ナルに対して、僕はすごくイライラした。この本を読むのをやめようとした。でも、僕が最後まで読んだのは、負けたことで自分を見失いつつある彼女に周りの人が関わり、どんな選択をするか気になったからだ。

勝ち負けと続けること
ナルは、水泳を続けるかどうか悩み続ける。ナルが迷い始めたきっかけは、負けたことだ。勝つことは気分がいいし、自信にもつながる。でも、負けることはなかなか受け入れられない。負けるくらいなら、やらないほうがマシだ。特に、今まで負けを知らない場合、一度の敗北が大きく影響する。でも、この本に出てくる人物は、勝ち負けを気にしない。「なんのためにやっているのか」をナルに考えてほしいと伝えているんだと思った。

ナルと一緒に競泳に取り組んでいた姉のボドゥルは、中学から飛び込みに転向する。ナルはとまどったと思う。同じ環境で過ごした姉が、競泳をやめた。そして自分は負けた。もし、僕もナルと同じ状況になったら、続けるだろうか。負けたことや自分の実力の無さ、そして相手の実力を認めることは素直にできないと思う。ナルが水着を怪しんだのも、わかる気がした。

でも、負けてわかることはあると思う。僕はサッカーをしている。始めて二ヶ月。監督がたくさん練習試合を組んでくれるから、試合に出られるようになった。すぐに抜かれるし、ボールもなかなか回ってこない。チームも勝てることが少ないけれど、僕は今、サッカーが楽しい。ちょっとずつできることが増えている。トラップができる相手からボールを奪える。全体のスコアは負けだけど、僕のプレーを細かくわけると、うまくなったことがある。相手には負けても、この前の自分には勝ってるのかな。

まとめ
ナルが競泳を続ける決心をしたのは、まだ自分が速くなれると感じているからだと思う。ぼくもやめようかどうか迷った時、自分がうまくなる自信があるかどうかで考えたい。僕は、まだまだサッカーがうまくなれる。自分が上達できると思ったことは、たとえ負けても取り組みたい。僕の中に継続の基準ができた。迷いに迷った主人公のカン・ナルが、僕に教えてくれた。

 

「5番レーン」を読んで②
 
「ダイヤはダイヤでしか磨けない、人は人の中でしか磨けない」という言葉、あなたは聞いたことがありますか?私はこの本『5番レーン』を読むまで、この格言が具体的に何を意味するのか、深く考えたことがありませんでした。しかし、この本を通して、私は人間関係の重要性について新たな洞察を得ることができました。

ナルの悩みや葛藤や、してしまった人間としてダメな事件などを通して、「ダイヤはダイヤでしか磨けない、人は人の中でしか磨けない」という言葉の深さを理解することができました。

また、特に私が引きつけられたのはカン・ボドゥルというキャラクターでした。彼女は主人公ナルの姉で、水泳から飛び込みに転身します。この変化は人間の興味や目標が時間とともに変化することを示しています。多くの人は主人公ナルの悩みや葛藤などに焦点を当てるかもしれませんが、どういうわけか私はボドゥルの、才能があるのに別のものに興味がでて、あっさり水泳をやめてしまったという部分に人間ぽさを感じたのです。

本を読み終え、父にこの本の内容を話すと、父は「その人が何を恐れ、何を不安に思い、何に対して怒りを感じるかで、その人の価値が計れるものなんだ。それらの対象が自分のプライドや自分の存在価値の優劣とかにまつわるものの場合、まだ“社会性”を意識できていない幼稚な存在だってことが分かるんだ。」といいました。

私は父のこの言葉にハッとさせられました。なぜなら、ナルや登場するキャラクターたちが経験する葛藤や悩みが、まだ社会は関係ない「個人的なもの」だったからです。つまり、ナルやナルの気持ちに共感している、読者の私自身も、まだまだ子供なんだなということに気づかせてくれました。大人は仕事のことや政治のことなど、自分を超えた「社会」のことについて悩んだり苦労をしてるのに、ナルも私も「自分」のことばかりに目が向いている、まだまだ子供なのだと気づけたのです。

物語は最終的にナルがキム・チョヒに次いで2位になるという結果で終わりますが、これは「どう負けたか」が大事な意味を持つ試合となりました。このエピソードは、ナルに「ダイヤはダイヤでしか磨けない、人は人の中でしか磨けない」という言葉の意味をキョヒとの関係を通じて理解させた場面だと思いました。

全体的に見て、この本から、人間関係の重要性を再認識しました。人間関係がなければ、私たちの人生はどのように変わるのでしょうか?これは、他者から学び、成長することの大切さを示しています。そして、この本を読んで、私は自分自身の若い時の悩みや葛藤は、成長するために与えられた課題のようなものだと思えるようになりました。

私たちは他人との関係性の中で成長するのです。その中で学びはさらに深まり、自分自身の視野も広がるのです。私はこれからも、人々との交流を通じて、自分自身を磨き続けていきたいと思います。この本を通じて学んだ「人は人の中でしか磨けない」ことを、私の生活の中で意識しつづけたいと思います。
 


 

・人は葛藤の中で成長する。
・不安や恐れ・怒りのありかで自分の価値がわかる。

 

用紙・字数のルール その他

原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰に規定はありません。
文字数については下記のとおりです。

小学校低学年の部(1、2年生) 本文 800字以内
小学校中学年の部(3、4年生) 本文1,200字以内
小学校高学年の部(5、6年生) 本文1,200字以内
中学校の部 本文2,000字以内
高等学校の部 本文2,000字以内

※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

応募のルールについての詳細は主催者ページで発表されます。
「青少年読書感想文全国コンクール応募要項」
 

他の課題図書&過去の入賞作品

2023年の小学校高学年(5,6年生)用の課題図書は次の4冊です。
クリックすると解説ページが開きます。

過去の課題図書の紹介

過去の課題図書も「自由読書」のジャンルとして感想文を提出することができます。そのため、どの本を読もうか迷っている場合「書き方のアドバイス」や「例文」が存在する過去の課題図書の中から本を探してみるのも得策です。

2022課題図書

2021課題図書

2020課題図書
 
2019課題図書

2018課題図書

2017課題図書

2016課題図書
 

また、長年読み継がれている「名作」の中から感想文を書く本を選ぶのもよいでしょう。こちらも書き方のアドバイスや例文つきです。
名作おすすめ本一覧
 
書き方の参考用に、過去の入賞作品の紹介ページも作りましたのでご活用ください。

【最重要ページ】感想文を書くにあたっての「コツ」「構成」「話の広げ方」などの詳細は下記のページに掲載しています。中高生向けですが、小学生に書き方を教えるご家族にも参考になる内容ですので、ぜひ一読ください。(気になる審査基準も掲載!)

読書感想文の書き方のコツ
(テンプレートつき)

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