「魔女だったかもしれないわたし」読書感想文の書き方【例文つき】
2023年の課題図書対策!
こちらでは「第69回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校「高学年」の部(5、6年生用)
『魔女だったかもしれないわたし』の「あらすじ(内容)」や「着眼点のポイント」、そして「感想文の書き方の例文」などをご紹介いたします。
※おもに、小学生が1200字で読書感想文を書くための「書き方を教える大人むけの内容」になります。
エル・マクニコル 著 櫛田理絵 訳 PHP研究所 1,540円 (税込み)
240ページ
~~目次~~~~~~~~~~~~~~~
「魔女だったかもしれないわたし」あらすじ
ここがポイント!着眼点の例
読書感想文の例【例文】
他の課題図書&過去の入賞作品
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「魔女だったかもしれないわたし」あらすじ
この本は、現在も私たちが直面するいじめの問題と、歴史上の魔女裁判を通じて、社会的な課題を深く考える切っ掛けを提供している作品です。
スコットランドで生活する少女、アディは自閉傾向があり、学校の授業で魔女について学びます。そして彼女は、数世紀前に、「ちょっと違うだけ」という理由で魔女として疑われ、命を奪われた人たちがいたことを知ります。それには、偏見から魔女とされた人々が拷問を受け、無実なのに死刑にされたという恐ろしい事実も含まれていました。アディは、今の自分が魔女として疑われていたかもしれないと感じ、深い葛藤を抱きます。
「魔女狩り」と呼ばれる出来事は、中世ヨーロッパ社会の中で、社会秩序が乱れ、緊張が高まると「異端者」を見つけ出し、「魔女」として排除するという悲しい歴史だったのです。しかし、それは過去だけの話ではありません。現在の世界でも、例えばウクライナ侵略のような国際的な混乱が起きると、私たちは自己正当化をしようとします。
アディは、偏見と差別から逸脱者とされ、魔女とされて迫害された人々を思い出させるため、村に魔女の慰霊碑を建てる提案をします。村の権力者たちに反対されつつも、彼女は自分の姉たちや村の人々の協力を得て、慰霊碑の建立を成功させます。そんな中、彼女は自分の姉が学校でいじめに苦しんでいることを知り、それぞれが「人と違う」ことを理解し、受け入れることができる社会を目指すようになります。
アディの行動力や、公平に接する図書館司書のアリソン先生の存在が描かれるこの本は、教育改革が始まったばかりの日本の子供たちにもとても重要なメッセージを持っています。学校が安心できる場所であること、たとえば、学校図書館がいつでも開いていて、子供たちが立ち寄れるような環境作りを社会全体で考える必要があるということです。
目の前にある問題を少しでも良い方向にしようと現状に立ち向かう主人公の葛藤と成長を通し、時空間を超え、自分の状況と照らし合わせながら読んでいただきたい作品です。
★差別や偏見、周囲と違う点をテーマにした課題図書としては、2022年の一番のおすすめ本でもあった「セカイを科学せよ!」が参考になります。
⇒「セカイを科学せよ!」読書感想文の書き方【例文つき】
「魔女だったかもしれないわたし」着眼点の例
数ある本の中から、どうしてこの本を選んだのかを説明するところから書き出すのも良いでしょう。
自閉の子への考え方や接し方について知ったこと、考え直したこと。
本作の中で自閉の子が周囲から誤解されやすい点について触れています。それは「自閉=独りよがりで共感力に乏しい」と思われていること。実は真逆で「自閉の子ほど共感力が強い」という記述がありました。このような点など、自閉について理解したことをまずはまとめましょう。
「思い」と「表現」にズレが生じてしまい、相手に誤解されることはだれしも経験するものです。そのような自分の経験を紹介し、自閉の子は、そのようなことが多いために苦労している人間なのだという理解を示す感想文もよいでしょう。
エミリーやマーフィ先生はあからさまによくない対応をしている人物として描かれていますが、そのような登場人物の言動のどの点をどのようにすればよかったのかを説明する感想を書き、自閉の友達に対する接し方の「ありかた」の理解を示す感想文もよいでしょう。
アディが「自閉症」という言葉をきらい「自閉的」だと表現しましたが、これは病気ではなく一つの性格だと思ってもらいたい現れといえるでしょう。これはいわゆる「セルフイメージ」「自己像」の問題ですが、このアディの捉え方を引き合いに出し「決めつけ」や「レッテル」がその人に対する「失礼なもの」であることの理解を感想文で述べるのもよいでしょう。
アディの類語辞典をエミリーが切り裂いたエピソードが書かれていましたが、その際、周囲には何もできないクラスメイトたちがいました。だれも明らかに悪いのはエミリーだと分かっているのに、周囲を気にして自分の思いをはっきり言えなかったわけです。こういった状況はだれもが経験することです。そしてそのたび心は重くいやな気分になるものです。しかし転校生のオードリーは、しっかり自分の意見が言え尊敬に値するものです。この点について自分の過去の思い出や、本来あるべき対応など、考えたことを述べる感想文もよいでしょう。
アディは委員会で慰霊碑を作ることを提案しますが、何度も反対されます。それでもあきらめずに提案し続け、最後には委員会で認められたという点に注目し、事を成し遂げる際の考え方について学んだ点を述べる感想文もよいでしょう。慰霊碑を建てることができたのは、村民のミリアムが援助してくれたおかげでもありますが、これも「あきらめずに続ける」ことにより協力者が現れるという教訓づけのような内容でもあります。
アディが慰霊碑を作るまでに至った過程で、家族や周囲の「協力」が得られた点にスポットを当て、周囲を動かすためには「何が必要か」その点の学びを感想文で述べるのもよいでしょう。
「私の父はよく・・」や「本の内容を父に話すと、父は・・」というように家族の言葉を紹介する感想文にしてみるのもよいでしょう。家族の言葉を紹介する形にすることで、本の内容を超えた高度な感想文に発展させることができます。
例)本を読んで内容を父に話すと、父は「20世紀の人類が発見した重要なテーマは人種の平等や多様性の価値であり、21世紀の現代はその考え方を現実の社会で実現することだ」と、普段の父からは聞けない社会性のある言葉を聞くことができた。私はこの父の言葉を聞き・・」
例)この本の内容を父に話してみると、父は「二人の人間がいて、常に意見が同じなら、そのうち一人はいなくてもいい人間である」という格言があることを教えてくれました。これは、一人一人の人間に「個性があることの価値」を示す格言なのだそうですが、この格言は、現代風に言えば「多様性の価値」を示す格言ということもできるでしょう。「他人と違う」ことがあれば気にしてしまいがちな私でしたが、本書がきっかけとなり「他人と違うことこそがその人の存在価値なのだ」と気づけたことは私にとって衝撃的なまでの発見でした。
よって、自分とタイプの違う人間がいた場合、それは「感謝の対象」であり、決して「攻撃の対象」ではないのです。「感謝の対象を攻撃してはいけません」そのことが理解できた内容の感想文を書くのもよいでしょう。
例えば、ウィルスや菌が蔓延した場合、同じ体質の同一種族ばかりだと、一気にその種族は絶滅してしまうことになります。考え方においても、さまざまな考えをもつ仲間がいてくれることで、その種族は滅びずに済むわけです。同一種族内でバラエティーを持たせることは「種の生存戦略」なのです。
本書の中で学んだことを一言であらわす「ことわざ」や「格言」などを紹介し、その言葉を深く理解させてくれる作品だった、とまとめる感想文もよいでしょう。
例)「短所は短い長所である。」という言葉がありますが、本書をよみ私は、自閉的な人や、周囲とは少しタイプが違う人に対しては、それを長所のひとつだと捉えるようになった。・・・など。
「この本をきっかけにして、いろいろなことを本を読んでもっと勉強したいと思えるようになりました。」・・・という締めくくり方もよいでしょう。読書の習慣を身に着けるキッカケになったとする感想文は「教育的効果の表れを感じさせる感想文」です。
この本を読んで、物語や経験などを「伝えることの価値」「書き残すことの価値」について気づけたことを発表する感想文も素晴らしい着眼です。そして「自分も大人になったら物語や経験を本に書き残せるような大人になりたいなと思いました。」とするまとめ方も良いでしょう。
・・・これらの中からいくつかを取り上げ「思い出」や「最近の出来事」などと絡めて感想文を書いてみましょう。
「感想文の広げ方」については、下記のリンク先にまとめてあります。
⇒「文字数が足らない場合の対策」と「話の広げ方」
学校などの教育機関が与える課題は「教育的成果」を期待してのものです。そのため、教育機関からの課題としての読書感想文を書くにあたっては「どのような学びを得ることができたか」を感じ取れる感想文にすることが大切です。
「魔女だったかもしれないわたし」読書感想文の例【例文】
以下に、読書感想文の例文をご紹介いたします。文字数はまちまちですが「書き方」や「着眼点」の参考にしていただければと思います。小学生ではまだ習っていない漢字も含まれているため、その部分も平仮名に直したあとの文字数で、規定の文字数に合わせてください。
「魔女だったかもしれないわたし」を読んで①
※以下の感想文は動画の「モデル文」を横書きにしたものです。
書き出し
「人とちがうというだけで処刑された」帯に書かれた、衝撃的なメッセージが私の目に飛び込んできた。「もし私が、今よりもずっと昔に生きていたら…」処刑された人たちは魔女と呼ばれ、その魔女と自分を重ねた主人公のアディ。彼女は、感受性が鋭く、ほかの人は気にしないことが気になったり、自然に人の会話が聞こえたり、物事のとらえ方も人とちがったりと、自閉的な個性をもっている女の子だ。
感じたことを正直に
私は、アディのような子に出会ったら、どうすればいいだろうかと考えた。その子をわかってあげられるだろうか。例えば、私も同じことを聞きたかったり、やりたかったりしたときは、その子に全部ゆずったほうがいいのだろうか。主張がぶつかって、その子が泣き出したり大声をあげてパニックになったりして、その原因が私だとしたら…想像すると、どうしていいかわからない。とても難しいことだ。
具体例をあげて
この話の中で、アディは魔女の話を聞く場面がある。気になったアディは、質問が止まらない。低学年のころ、授業中に「はいはいはい!」と何度も手を挙げて、先生に指名してもらえないと不機嫌になる子がいて、私は嫌な気持ちを抱えてしまった。他の子も言いたいことがあるのに、とか、当ててもらえなかったことに対して、もらす不満を聞いているのがつらかった。
アディから学んだこと
アディはすごいなと思ったことが2つあった。1つ目は自分は自閉的だと受け入れていること。もう1つは、自分が自閉的であることを、人に伝えていること。「こういう子なんだな」とわかっていれば、ゆずったりがまんできたり、その子に対しどうしたら良いか、みんな考えられるのではないだろうか。アディは考えて行動していると思った。
これは、私にも関わる大事なことだと思う。私にもきっと、他の人にはない個性があって、トラブルの原因になる一面があるはずだ。人のせいにするより、自分にはこういう特性があるんだなと、アディのように自分を理解することが、友達とスムーズに過ごす上で大事なことなんだと思う。
まとめ
この本を読んで、改めて自分と向き合うこと、人を理解してあげることを考えた。ただ、私はアディのような子と、ずっと仲良くできる自信がない。長い時間一緒にいると、私もストレスになってしまうと思う。これは、相手も同じなんじゃないかな。だから、自分や友達はどんな子なのかを理解して、ほどよい距離で付き合うことが、今の私にできることだと思う。くっつき過ぎず、離れすぎず。一緒にいすぎず、全く付き合わないわけでもない。ほどほどの関係を作っていくことが、お互い気持ちよく過ごせる方法ではないかと思った。
「魔女だったかもしれないわたし」を読んで②
「あなたは自分自身が”ちょっと違う”と思ったことはありますか?その違う部分を怖がったり、悲しんだことはありますか?私もそんな感じがしたことがありました。でも、この本を読んだからこそ、自分の違う部分を大切に思うようになりました。
このお話は、スコットランドに住む少女、アディの物語です。アディは、ちょっと自分が他の子と違うところがあって、それが気になることがありました。学校で、昔の魔女のお話を学びます。昔、ちょっと違うだけで魔女だと疑われ、命を奪われた人がいたことに、彼女は驚きました。それを聞いた彼女は、自分がその昔、魔女として疑われていたかもしれないと感じ、深く考えるようになりました。
この「魔女狩り」のお話は、昔のヨーロッパの話なのですが、それは過去だけのことではありません。今でも、私たちは違う人を見つけては、自分たちを守ろうとすることがあります。
そんな中、アディは、昔の魔女の人たちのために、村に記念碑を立てる提案をします。そのアイデアは村の大人たちから反対されましたが、彼女は諦めませんでした。自分の姉や村の人々の助けを借りて、ついに記念碑を立てることができました。そして彼女は、自分の姉が学校でいじめに遭っていることを知り、それぞれが人と違うことを理解し、受け入れることができる社会を目指すようになりました。
アディのお話を読んで、私は自分が他人と違うことが怖くなくなりました。それどころか、それが私の大切な部分だと思うようになりました。そして、この本が教えてくれた大切なメッセージは、「人と違うこと」を理解し、受け入れることが大切だということです。また、学校や図書館が子供たちにとって安全な場所であるべきだということも教えてくれました。
アディの物語から学んだことを、私たち自身の生活に生かしてみてはいかがでしょうか。違いを理解し、受け入れることで、私たちはもっと素晴らしい社会を作り出すことができるのです。そして、そのような社会を目指すために、この本から学んだことを大切にしていきたいと思います。
「魔女だったかもしれないわたし」を読んで③
私はこの夏休みに『魔女だったかもしれないわたし』という本を読みました。主人公のアディは、自閉的な特性を持つ少女で、新しく転校してきたオードリーや、村に住む魔女のような女性、ミリアムとの出会いを通じて、自分自身を理解し、成長していきます。
この本を読み終え、私は、祖父の座右の銘である「自灯明」という言葉を思い出しました。その意味は、自分自身で光を照らし、自己を導くという意味です。要するに「自分のことは自分でなんとかしろ」という意味です。自閉症という言葉を私たちは普通に使いますが、アディが「自閉症」ではなく「自閉的」と表現することにこだわっていた部分を読み、自閉が一つの個性であり、その特性を光とし、自己を導く力に変えようとした本書の内容を同じように感じたわけです。
しかし、本の中でクラスメイトのエミリーや先生のマーフィは、アディの特性を理解せず、時には厳しく当たる場面がありました。誰もそれに対して声を上げないことに、私自身も「自灯明」の意味を再認識し、自分の意見をはっきりと持ち、自分の意義を見つける必要性を感じました。
また、アディが村に慰霊碑を建てるために何度も挑戦し、困難を乗り越える姿は、「自灯明」の真骨頂でした。自分自身を照らす光を信じ、自己を導く力を持ち続けることの重要性を教えてくれました。
私自身も、ピアノの練習で苦労したとき、家族や友人の助けがあったからこそ乗り越えられました。その時の感情が、この本を読んで蘇り、自己を照らす光、「自灯明」を持つことの大切さを改めて認識しました。
この本を読むことで、「自閉的」な人々への理解を深め、自分自身の光を照らすこと、そして挑戦し続けることの大切さを学びました。これからも「自灯明」を心に留めて、自分自身の道を切り開いていく決意を新たにしました。
・他人と違うことこそがその人の存在価値
・いろいろなタイプの人がいてくれるお陰で世の中全体が成り立っている
・自分と違うタイプの人間は「感謝の対象」である
他の課題図書&過去の入賞作品
2023年の小学校高学年(5,6年生)用の課題図書は次の4冊です。
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過去の課題図書の紹介
過去の課題図書も「自由読書」のジャンルとして感想文を提出することができます。そのため、どの本を読もうか迷っている場合「書き方のアドバイス」や「例文」が存在する過去の課題図書の中から本を探してみるのも得策です。
また、長年読み継がれている「名作」の中から感想文を書く本を選ぶのもよいでしょう。こちらも書き方のアドバイスや例文つきです。
名作おすすめ本一覧
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読書感想文の書き方のコツ
(テンプレートつき)